May 2011アーカイブ

セラフィールド近郊のシースケールにおけるCOMAREの誤りに関し、内部被曝の不確実性に対し十分な考慮がなされていなかったことが指摘されており、その点で現在の福島における内部被曝の現状に対し十分な考慮がなされているだろうかといった問題意識が、厚生労働省や食品安全委員会に対して投げかけられることになる。

ICRPの勧告は、微量線量測定法、誘発されたゲノムの不安定性、バイスタンダー効果、癌のメカニズム、生殖細胞系のミニサテライト変異といった現時点における生物学的知見といったものを十分に取り込んでいないといった指摘が同様になされており、福島の事故を受けて、食品安全委員会はICRPの考え方に立脚した施策を立案することで十分としているが、その暫定規制値の考え方の前提と細部に対し疑問が投げかけられることになる。

具体的にはICRPがリスクを算定する際に用いている放射線荷重係数(wR)や組織荷重係数(wT)に関し、wRは観察されたRBEを考慮しているが主観的な値であり、他に適切なRBEがあるならば利用できる最善のデータを用いるべきであるといったICRPの指摘と、粒子の化学形により摂取の状況が異なるといった理由から計算される組織線量係数に関しかなり大きな信頼区間を有する可能性がある推定値を放射線防護のために用いているといった指摘を考慮する必要があるだろう。

分かりやすく言えば、分散が大きい推定値をリスク算定の前提として考慮し、安全性の根拠に用いている食品安全委員会の姿勢はいわゆる風評被害を拡大させる方向に作用させるだけではなかろうかと考えることがあった。つまり推定値の分散が大きいならば予防措置としてはさらに大きな値を用いることが必要とされているのだが、そのような説明はなされていない現状がある。さらに申し添えるならば、暫定値なのだから現状と前提に関わる知見が纏まっているならば逐次修正していくことが求められてしかるべきだろうと考えることがある。

そして疫学に関わるレポートを読み込めば読み込むほど理解されることだが、彼らは基本的に治療に携わる訳ではないから、被験者は多ければ多いほどよいといった考えを有しており、予防措置をとり予め被験者になりうる立場にある人々の数を減らすといったことを考慮していないのは、行政やメディアのパブリケーションを含めて考慮しても、改めるまでもなく、被害が現在進行中であるといった認識を避ける意図があるからであろう。個人的に私は事実は事実として向かい合わなければならないといった見方に立っている。

これまでチェルノブイリ事故による、大気核実験のフォールアウトによる知見に触れることなく、放射線は目に見えない、そして放射線に纏わる文献は外国語で記されており一般には知られることがないといった知識の間隙を縫って行政側からそしてメディアにおいて安全性を謳う声が多方面に亘り流布していたのだが、正しい知識を身に付けるとはどういったことかを示してみたいと考えるときがある。そしてこれが全てであるとは言及しないが、CERRIEのレポートの一部を訳すことにより上記の知見をサポートすることにする。URLは以下に示されるとおりになる。
http://www.cerrie.org/pdfs/cerrie_report_e-book.pdf

内部放射体の放射線リスクを検証する委員会の報告(CERRIE)

1 イントロダクション

1.1 バックグラウンド

3 放射線リスクは放射線防護委員会(ICRP)によって推定されている。それらは欧州連合によって認められ、国立放射線防護委員会(NRPB)からの助言とともに英国に適用されている。これらのリスクは主に、広島と長崎の原爆投下からの非常に短時間の外照射による健康への影響から得られている。重大な関心は、これらのリスクが内部放射体からの慢性的な照射の健康への影響を予測することに対し適切に適用されることにおいて、それが妥当であるかどうかにある。また多くの疫学的研究は内部放射体により被曝した集団を用いて行われている。これらは、地下で活動する鉱夫とラドンやその崩壊生成物により公共の場で被曝した一員、ラジウムの放射性同位元素を摂取した個人、放射性造影剤トロトラスト(Th232を含む)を注入された患者、高レベルのプルトニウムにより被曝した旧ソ連の労働者を含むものである(UNSCEAR,2000,IARC,2001)。これらの研究は、日本の原爆生存者から得られたリスクと内部放射体からのリスクにおいていくらか直接の比較を可能にした(Harrison and Muirhead,2003)。

4 当時世界最大の商業核燃料再処理施設があったセラフィールド付近のシースケールの村において子供の白血病と他の癌の増加が発見されたことに随い(2)、放射線リスクに対するICRPのアプローチにおける議論が1983年に高まった。Black Advisory Groupによるその後の調査のレポート(1984)に随い、政府はさらに問題を調査するために環境における放射線の医学的側面に関する委員会(COMARE)を1985年に設立した。COMAREの最初のレポート(1986)は、セラフィールドの記録された放出や測定された放射性核種濃度から計算される推定された放射線線量は約400の要因によるものになり、非常に小さく、シースケールの子供における白血病の発症率の増加を説明することができないと結論づけた。COMARE(第4報,1996)の現在の見解は以下のようになる。「...シースケールの人口に対する放射線線量の現段階における最良の推定値ははるかに非常に小さいものになり、研究された時期における村の若い人々において発症した白血病や非ホジキンリンパ腫の症例に関する観察された数を説明することができない」

2 1983年11月1日に放送された「Windscale -The Nuclear Laundry」といったヨークシャーのテレビ番組により報告される。

5 放射性物質の世界最大級の放出源の1つに隣接した明確な白血病群の発生は偶然か、いくつかの他の不確定要因によるといった見方を、ほとんどの環境団体や一部の科学者は受け容れなかった。彼らの見解によれば、より単純な説明は、ICRPのリスクモデルが不正確であり、これらのモデルの再評価が指摘されているといったことだった。この見解は特定の他の原子力施設付近の白血病群の観察によって補強されている。第2章で議論されるように、多くの最近の科学的レポートは、いくらかの内部放射体に対するICRPの線量係数が相対的に大きな不確実性に関連していることを示している。その結果、何人かのCERRIEのメンバーは、(第3章の41、第4章の45〜49を参照せよ)シースケールにおける内部被曝の推定値に関する不確実性は十分に大きく(特定の放射性核種や組織に対して2ケタ以上のオーダーの大きさになる)シースケールにおける影響の要因として放射線を除外するのは妥当ではないだろうと結論づけた。一方、一部の科学者は原子力施設から離れた地域における子供の白血病群の存在を指摘している。彼らの見解では、農村と都市の人口の混合は原子力施設に隣接しているか離れているかといったことがこれらの群の全てではないにせよ大半を説明するための重要な要因になるかもしれなかった。また、現在の放射線リスクの推定値における本質的な誤りは他の疫学的研究の知見に対する含意を付随しており、全体の誤りを示唆することを支持するこれらの研究からの証拠がほとんど存在していないことによる(例えば、Stevens他,1990,Darby他,1992を参照せよ)。また一部のメンバーによりなされた視点は、セラフィールドに起因する内部被曝(そして他の原子力施設付近においてさらに低く推定された被曝)は自然に発生する放射性核種から受ける被曝よりかなり低いといったことだった。

6 一部のメンバーにより呈されたもう1つの懸念は、1986年4月におけるチェルノブイリ原子炉事故において放出された放射性核種によるヨーロッパ中に対する影響の程度になる。これらのメンバーは、事故後多くの国で発生した乳児白血病や事故の結果として照射された個々の子供におけるミニサテライト変異に対するデータを引き合いにだしている。彼らは、これらの研究が内部放射体からのリスクを大幅に過小評価している強い証拠を与えていると示唆している。環境団体や一部の科学者の関心の原因となるもう1つの要因は、どの刊行物が研究によって資金を与えられていたかといった問題になる。これらの要因と見解の違いは、科学的根拠に基づく政策に対する公衆の信頼における低下が報告される事実とともに(例えば、Beck,1992を参照せよ)、内部放射体からの放射線による被曝の放射線リスクの緊密な検証を政府が必要としていると認知することをもたらした。

1.2 フォーマット

14 2003年6月に委員会は、さらに広い人々に情報を与え、コメントを受け取るためにその研究の調査レポートを公表した。2003年7月に委員会は、調査レポートや当時の委員会の知見を議論するためにオックスフォードにあるセントキャサリンズカレッジで3日間のワークショップを開催した。ワークショップには世界中から招かれた約80人の代表が参加し、それはICRP、UNSCEAR、NRPB、国際保健機関、政府部門や規制当局、グリーンピース、フレンズ・オブ・ジ・アース、低レベル放射線の問題に関心がある地域にある英国のグループからの代表や、幅のある見解を有する国際的な科学者を含むものである。ワークショップは、参加者によって低レベル放射線のリスクにおける議論に役立つ貢献がなされることを考慮している。ワークショップでなされたプレゼンテーションは委員会のウェブサイトで発表されており、その参加者のリストとともにワークショップにおけるレポートは付録Bに含まれている。ワークショップで述べられ、提出された見解の多くは委員会によってその後考慮されている。

2 内部放射体からのリスク

パート1

イントロダクション

どのように我々は放射線を定量化するのか。

12 これらの理由から、内部の放射線核種からの放射線線量の推定は必然的に複雑になる。そのプロセスは、しばしば多くの科学者によってそして全てではないが公衆の普通のメンバーによってぼんやりとだが理解されている。それゆえ癌や遺伝的影響に対するリスク要因は外部や内部といった全てのタイプの放射線に適用されることが可能であり、ICRPは、異なった放射源からの線量の追加を許容するスキームを展開した。簡単な用語で言えば、これは順に行われる以下の4つのステップを必要としている。

a 各々の組織における放射性核種濃度の推定(代謝モデルを用いて)

b これらの濃度の吸収線量への変換(線量モデルを用いて)

c 吸収線量の第2の概念-等価線量への変換(異なったタイプの放射線を考慮した放射線荷重係数、wRと呼ばれる変換係数を用いて)

d 等価線量の第3の概念-実効線量への変換(各々の組織の異なった放射性感受性を考慮した組織荷重係数、wTと呼ばれるもう1つの変換係数を用いて)

13 結果として得られる実効線量は、癌や遺伝的影響のリスクを基礎にした線量限界(そして制限)と比較される(4)。ICRPは、実効線量は疫学的研究や人体被曝に対する他の研究ではなく放射線防護上用いられることを意図した量であることを明らかにしている。これらについて、器官や組織における吸収線量や問題になっている放射線のタイプに関連した特定のデータが用いられるべきである。

4 ICRPは致死的な癌のリスクを挙げており、致死的でない癌や遺伝的影響に対する付随的な要素を含めている。放射線からの致死的でない癌の影響、例えば心血管系への影響は含まれておらず、それはリスクのもとになる疫学的、機械的データの不足による。

現在のリスク推定における不確実性

17 上記のモデルによって計算された線量は単一の値にはならないが、幅をもった可能な値になり、しばしばベル型もしくは類似した形状の分布曲線によって示されている。現在のICRPの線量係数(5)は単一の値として示されている(通常最も確からしい値つまり分布曲線の高い点)。多くの場合、値の範囲は広くなりうる。これらのモデルの不確実性はしばしば曲線における5パーセンタイル値に対する95パーセンタイル値の割合として定義され、これはこのレポートで用いられる定義になる。最近の研究は確率的手法を用いて不確実性を定量化しようとしており、いくつかの研究(Goossens他,1997,NCRP,1997)は、いくつかの放射線核種の組織線量係数における不確実性は非常に大きくなる可能性があると推論している(パート2のセクション2.7を参照せよ)。

5 器官/組織に対する等価線量や特定の放射線核種における1Bqの経口摂取や吸入からの体に対する実効線量として定義される

パート2

2.1 イントロダクション

8 原爆のリスク要因(外部γ線から)を外部と内部の双方といったあらゆるタイプの放射線に適用するために、共通の線量単位がICRPによって考案されてきた(1991)。このスキームでは、被害の放射線単位は等価線量として定義され、シーベルト(Sv)で測定されている。任意のタイプの放射線にとって、異なった放射線のタイプのRBEにおける違いを考慮するために、この生物学的等価線量は、吸収線量(グレイによって測定された物理的線量)に倍率や放射線荷重係数(wR)を掛けることによって計算される(上記のセクション2.2を参照せよ)。実際に、内部放射体のためにICRPによって定義されたwR値はα粒子に対しては20であり、他の全ての共通の体内放射線のタイプに対しては1である。

9 等価線量が特定の器官や組織における特定の癌のタイプにおけるリスクを推定するために使われているのは、全身放射線被曝に関連した線量限界や癌の誘発と遺伝的影響の全体のリスクを特定することが一般的な放射線防護の目的にとって都合がよいからである(ICRP,1991,Dunster,2003)。この目的のために、放射線に誘発された癌、遺伝的影響、関連した健康被害の全体のリスクに対するその組織の寄与を考慮した組織荷重係数(wT)、乗数(9)を用いて、全ての放射源(外部と内部)からの組織に対する等価線量はいっしょにされている。この計算の結果はシーベルト(Sv)で測定された実効線量と呼ばれている。実効線量は放射線被曝の全ての放射源を説明し、線量限界と制限との比較を許容している。

9 体に対する全ての組織荷重係数の合計において定義によって統一性が存在している。

10 個々の器官や組織に等価線量と実効線量の双方を与え、ICRPは個々の放射線核種の摂取(セクション2.6を参照せよ)に対する線量係数(1BqあたりのSv)を公表している(ICRP,1989,1993,1994b,1995a,1995b,1996)。モデルを用い、線量は一般的に70歳まで(子供にとっては50歳まで)加算され、預託線量と呼ばれている。線量限界や制限は預託実効線量に関連しており、放射線に誘発された癌や遺伝的影響に対するリスクの推定値に基づいて設定されている(ICRP,1991)。等価線量と実効線量の双方は異なった放射線核種と外部放射線からの寄与の合計を許容している。

11 ICRPは線量係数における不確実性に関する情報を公表していないが、派生した線量とリスクの信頼性が目的とされる適用に関して重要な要因となることは明白である。(セクション2.7を参照せよ)。不確実性は線量計算の各段階で生じるだろう、そしてその段階とは、体内動態や線量モデルの使用、異なったタイプの放射線を同一視しようとなされる仮定(RBEを通じて)、全身線量を与える異なった組織の照射からの寄与の合計(組織荷重係数を用いて)、そして全てのリスクを導出することを示している。放射線の放射のタイプやエネルギー、その化学形、体における振る舞いの複雑性と知識、モデルパラメーターが基づいているデータの有用性に応じて、線量推定値における不確実性は放射線核種の間でかなり変化している。短いレンジの荷電粒子の放射による組織や細胞内における線量伝達の不均一性に関して重要な問題があり、その程度に関し、現在のモデルは十分に生物学的対象とのそのような相互作用やリスクのある対象となる細胞の特定を示している。事実、細胞や分子のレベルでの相互作用を考慮すると、吸収線量の実際の考え方は疑問であり、ときとして意味がないものになることになる。

2.2 相対的な生物学上の効果

14 様々なタイプの放射線は癌や遺伝的影響の原因となるその影響力において異なることが知られている。これらの違いは、染色体DNAを含んでいる対象となる感受性のある細胞を含め、関与している組織の空間を横切る荷電粒子によって生じた電離の軌跡の3次元構造に関連している。生物学的影響と電離の軌跡の構造とのリンクは微量線量測定法の分野での中心的な調査目標の1つになる。生物学的影響における判断を示すために過去一般的に用いられたものの多くは、電離の軌跡の構造における非常に単純な1次元の指標、つまり線形エネルギー移動もしくはLETになる。これは放射線の性質を示すためにICRPによってよく用いられる量になる(ICRP,1991)。しかし最近の計算とシミュレーションは、電離の軌跡の構造における複雑性の問題やどのようにそれが細部において生物学的影響に関連しているのかに対するアプローチをし始めている(Cucinotta他,2000,UNSCEAR,2000)。そのような考慮はまだ一般的に普通の線量測定やリスク評価に対するあらゆる単純な方法で適用されることができないと思われる一方、委員会は、微量線量測定法における理解の進歩が放射線リスク評価に対する科学的基礎を改善する可能性があり、このことが有益な発展になるだろうことに全般的に同意した。この分野における研究は推進されるべきである。

18 相対的な生物学的影響は参照放射線における吸収線量のテスト放射線における吸収線量に対する比として定義され、それは特定の動物や試験管内の細胞の研究における同一レベルの生物学的反応をもたらすために類似した実験状態の下にあることを必要としている(ICRP,1986,ICRP,2003)。RBEはそのため経験的な量になり、それは生物学的システムや実験の状態に依存している。RBEは通常、線量や線量率とともに変化することが知られており、参照低LET放射線のさらに高い急性の線量に対する曲線の反応のため、高いLET放射線に対し、低線量や線量率における最大値までしばしば増加していた。この値はICRPによってリスクの推定に用いられるものであり(2003)、それは、線量反応の関係において線形の領域があり、ICRPの方法論によって参照低LET放射線とさらに高いLET放射線との比較のための不可欠の前提条件であることが仮定されているからである。

19 これらは位置とエネルギーの違いによるかもしれないが、RBEは、同様に比較のためにとられた到達点やある事例においてはα線核種に依存している。α粒子のRBE値の推定を許容する限られた人間のデータは以下に示される(セクション2.3)。これらは、RBEの特定到達点に関し肺や肝臓癌に対して10〜20周辺を、骨癌や白血病に対してさらに低い値を示唆している。癌が関連した影響に関して、外部低LET放射線と比較して10周辺もしくはさらに大きいα線に対するRBE値に関し動物や試験管内の研究からの十分な証拠が存在している。犬における骨癌誘発の研究は、Pu239に対して高い値をそしてラジウム同位体に対して低い値をもつ異なった骨親和性をもつα線核種に対するこの到達点に対して異なったRBE値を示唆している(UNSCEAR,2000)。しかしこれらの比較は平均的な骨格の線量に基づいており、その違いは、Ra226/228からよりPu239からのほうが骨の表面に近い対象となる細胞に対しさらに大きい線量を伴い骨における放射線核種の異なった位置にさらに起因している可能性がある。したがってPu239や関連したアクチノイド同位体は骨の表面に集中し、一方ラジウムやストロンチウムの同位体は、カルシウムに化学的に類似したアルカリ土類のように、石灰化骨基質を通じさらに均一に分布する傾向がある(ICRP,1993,Harrison and Muirhead,2003)。人間や動物のデータは、骨に蓄積されたα線からの白血病のリスクはICRPモデルを基礎にして計算されるより低いことを示唆している。この不一致はこの病気に対するα粒子の20という放射線荷重係数(wR)の使用により白血病のリスクを過剰推定していることに部分的に起因しているかもしれないが、データは同様に、体内動態や線量測定の仮定が赤色骨髄内の対象となる細胞に対する吸収線量の過剰推定を導くかもしれないことを示唆している(IARC,2001,Harrison and Muirhead,2003)。自然に発生するPo210のα線にとって、研究は、骨格内に保たれる活動が赤色骨髄を通じて非常に均一に分布しており、そのため例えそれらが主に骨の表面から離れたところに位置していても、対象となる細胞に対するいくらかの照射に帰する可能性があることを示唆している(Naylor他,1991)。α線は付録2Dでさらに詳細に考慮される。

21 ICRPは一般的な放射線荷重係数(wR)の使用によってRBEにおける多くの実験上の違いを解決するため広い評価を用いており、そして係数に関し、全ての高LETα粒子照射に対し20の値が割り当てられ、全ての低LET放射線に対し1の値が割り当てられている(ICRP,1991)。このことが放射線防護のため大雑把に触れられた単純化であることは明らかである。厳密な科学的意味において、この行為は許容できるものとみなされないだろう。しかし放射線防護の行為として、もちろん運用上の結果が単純化によって過度の影響を受けていないと示されるならば、このアプローチは簡易性、実用性、透明性を基礎にして擁護されることが可能である。例えばもし、線量の推定の目的が規制値との比較のためにあり、一般的な放射性荷重係数が介入の必要性をはるかに下回る推定された実効線量を導くならば、科学的にさらに厳格な(そしておそらく費用がかさむ)計算方法を用いることは結果に影響を及ぼさないだろうといったことが許容されることが可能になる。

23 α粒子に対するさらに大きいかさらに小さい荷重係数に対する議論や異なる低LET放射線の影響における違いの認識から、委員会のメンバーは、wR値を用いRBE値における範囲を示しているICRPのスキームの容認に関し意見が異なっていた(例えばトリチウムのベータ放射やオージェ放射体、以下と付録2Cを参照せよ)。これらの違いにもかかわらず、委員会は一般的な合意に達し、それは重要な状況、例えば特定のタイプの癌のありうる原因の調査において、最も適切なRBEの取り扱いを含めて、特定の情報と利用できる最善のデータが用いられるべきであるといったICRPの勧告に随うことが重要だろうといった合意を示している。この勧告が全てにおいて観察されるといったことは明らかではない。

2.3 リスクの推定値

29 原爆の死亡率のデータに基づき、固形癌に対する線量反応関係は、約100mGyまで下がった線量に対する反応における統計的に有意な増加とともに、3Gyまでの線量のレンジにおける線形性と一致している(UNSCEAR,2000,Preston他,2003)。固形癌の発症における対応したデータは、いかなる線量の閾値(それ以下ではリスクが増加しない)も60mGyを超えることはないだろうことを示している(Pierce and Preston,2000)。大きな不確実性が存在するけれども(Wakeford and Little,2003)、診断における放射線撮影の間子宮内でX線に被曝した子供における癌の個別の研究、例えば子供の癌におけるOxford Survey(Bithell and Stewart,1975)は、原爆生存者の研究から得られる結果と一致していると推定された単位線量あたりのリスクとともに、10mGyのオーダーの線量において子供の白血病や(より不確実であるが)固形癌における統計的に有意な増加を示している。低い線量と線量率における癌リスクに対する原爆生存者のデータから得られるリスクの推定値を適用することにおいて、ICRP(1991)は2という線量と線量率効果係数(DDREF)を適用している。さらに低い線量と線量率において単位線量あたりのリスクがさらに低くなる仮定は、2から10までのレンジにおけるDDREF値をもつ急性低LET放射線の被曝による曲線の線量反応関係を示している(同様に前述のパラグラフ18以下におけるRBEの議論を参照せよ)。高LET放射線からのリスクを考慮するとき、いかなるDDREFも適用されない。原爆生存者のデータは2というDDREFと一致しておらず、事実白血病における線量反応の形状はそのような値を支持している(UNSCEAR,2000)。しかし原爆生存者における固形癌のデータは同様にDDREFのない線形の線量反応関係と一致している(UNSCEAR,2000,Preston他,2003)。一部の委員会のメンバーが低LET放射線において2というDDREFの使用は最も適切な利用できるデータの解釈になると考えている一方、他の意見は、2というDDREFが低線量におけるリスクの過剰推定になるだろうといった見解にいかなるDDREFも適用されるべきではないといった見解になる。

30 2というDDREFを適用する際に、ICRPは低線量における線量とリスクにおいて線形の関係を想定している。放射線防護の科学者において、このことが現在の証拠における最良のアプローチになることがコンセンサスになっている(Preston,2003)。しかし委員会のメンバーは、放射線防護のためにこの仮定を容認することにおいて意見が異なっている。1つの議論は関係が2つのフェーズを有しているかもしれないといったことになり、非常に低い線量において、リスクは単純な線形関係において期待されるより急に増加するかもしれず、その後中間の線量において一定の増加を示す前に減少するかもしれない。もう1つの見解は、数十mGyやそれ以下の線量において、影響を受ける全ての細胞が実際に損傷されるわけではないので、平均線量の考え方は徐々に意味のないものになり、リスクとの関係における展開は行われるべきではないといったものになる。3番目の見解は、低線量において癌に関する線形の線量とリスクの関係に対する直接の証拠はなく、回復や適応が閾値の影響を導くかもしれないといったことになる。さまざまなありうる線量と反応の関係は以下の図2.1に示されている。線形非閾値の反応における仮定は確かに都合がよいものであり、現在の観察データと一致していないが、重要な結果がその仮定から導かれるように、この問題がさらなる研究によって解決されることが重要である。

31 α粒子照射による内部被曝に対する外部リスク係数の適用に関して、多くの人間に対する研究(UNSCEAR,2000,IARC,2001)はICRP(1991)により用いられる情報を与え、他は肝臓、骨、肺における癌のリスクを推定している。

a 肝臓癌-放射線診断用造影剤としてコロイド状の二酸化トリウム(Th232、α放射体)を与えられた患者

b 骨癌-ラジウムで文字盤を描く人のRa226やRa228による職業上の被曝や医療のためRa224を投与される患者

c 肺癌-ウラン鉱山労働者のRn222による職業上の被曝や居住地における被曝の研究と矛盾しないデータを有する女性

32 白血病における増加はトロトラストを扱った患者(14)において報告されてきており、Pu239に誘発される肺癌における量的推定値はマヤーク原子力施設におけるロシアの労働者から得られている(IARC,2001,Harrison and Muirhead,2003)。比較は、これらの放射線核種による被曝から得られる放射線に誘発された癌におけるリスクの推定値と日本の原爆生存者から得られる推定値の間でなされている(Harrison and Muirhead,2003)。20というαRBEの仮定において、トロトラストの患者における肝臓癌の発症は固有のレンジをもつ不確実性の中にあり、原爆生存者のレンジと一致している。しかし2つの人口集団における白血病の発症の比較は、適用されたTh232のαRBEを約1〜2に減らすことになされるのみである可能性がある。したがって骨髄におけるα照射は、標準的なICRPの仮定に基づいて予測されるより白血病を引き起こす影響がさらに少ないだろうと思われ、動物データは白血病の誘発において低いαRBEに対していくらかの支持を与えるものになる。Rn222に被曝した鉱山労働者とその短いα放射の結果におけるデータに直接基づいた肺癌リスクの推定値は、ICRPの呼吸器モデルを用いて得られる推定値、20というαRBE、原爆生存者の研究に基づいたリスクの推定値より低い約3という係数の中に収まるものになる。同様におおよそのリスクの推定値はPu239に誘発された肺癌から得られている(付録2Dを参照せよ)。

14 トロトラストは1930年代や1940年代に臨床的に用いられる二酸化トリウムを含む造影剤である。それは比較的大きな粒子からなる不溶性の物質である。トリウムの中身は自然トリウム、α放射体であるTh232になり、その崩壊系列は6つの追加的α放射体を含んでいる。

34 上記の人間に関する研究に加えて、異なった放射線核種や外部放射線の影響を比較するデータは動物や試験管内の細胞を用いたさまざまな研究から利用できる。このような研究は放射線の影響のメカニズム同様RBEや線量反応関係における情報を与えている。照射された原爆生存者の子供における観察できる遺伝的影響が存在しないことは広く有益であるが、動物データは放射線に誘発された遺伝的影響の直接の推定値のみを与えている。組織における局所的に活動的な粒子のα照射からのリスクにおける特定の問題において、活動的な粒子の照射の後染色体異常や肝臓における癌に関する動物の研究は、影響が平均的な組織の線量に関連している可能性があることを示唆している(Brooks他,1974,1983,Barcellos-Hoff and Brooks,2001、付録2Dを参照せよ)。

2.4 体内動態モデル

35 ICRPの体内動態モデル(15)は大人や子供における摂取や吸入による取り込みを考慮している(ICRP,1989,1993,1994b,1995a,1995b,1996)。母体の摂取量から導かれる胎児における線量も同様に計算されている(ICRP,2001)。消化管、気道のモデルは、血液中に吸収されるもしくは体から失われるといったこれらのシステムにおける放射性核種の振る舞いを定義するために用いられている(ICRP,1979,1994a)。消化管から摂取された放射性核種の振る舞いは、小腸で生じる血液における吸収とともに、胃、小腸、大腸の部分を通過した時間によって定量化されている。血液に吸収されると仮定されている割合は元素の化学特性やあるケースでは摂取された化学形に依存している。その比率はヨウ素やセシウムに対して完全に吸収される程度からプルトニウムに対する0.1%より小さいものまでをレンジとしている(ICRP,1989)。プルトニウムのケースでは、問題となる化合物の溶解度のレベルに応じて、いくつかの吸収係数が用いられるかもしれない。放射性核種を含む吸入された粒子は鼻、肺の気管支や細気管支気道に蓄積すると考えられ、異なった部位における蓄積は粒子のサイズに依存している(ICRP,1994a)。肺からの除去は血液中への溶解や吸収により生じ、肺から喉にかけての粒子の拡散における反対のプロセスは消化管へのそれらの吸収によるものになる。血液に吸収されるまたは増加する比率は物質の溶解度や放射性核種の放射性半減期に依存している。

15 このレポートでは、モデルは物理学的もしくは生物学的システムにおける定量的な数学的表現として解釈され、このようなモデルは人間における放射性物質の取り込みと分布およびその後の組織における内部照射との関係における結果を予測するために用いられる。このようなモデルにおける数学的関数は数値パラメータによって制約され、それはモデルの一部になり、モデルを用いて計算を行うために特定の値を割り当てられている。体内動態モデルは、問題となるシステムの基本的な生理機能を表現するための1つもしくはそれ以上の部分からなるシステムにおける定義された元素やそれらの放射性同位体の振る舞いを表すことを考慮している。このようなモデルの信頼性は、それらの考え方(物理的構造と数学的関数)とパラメータに割り当てられた数値の双方における適切さに依存している。

36 血液中に吸収された放射性核種の振る舞いは特定の元素の全身モデルによって表れる(ICRP,1989,1993,1994b,1995a,1995b,1996)。複雑性におけるこれらの範囲は、均一の全身分布を仮定する非常に単純なモデル(水素やセシウム)から体の器官や組織の間や内部における振る舞いを考慮するマルチコンパートメントモデル(ストロンチウム、鉛、ウラン、プルトニウム)までになる。水素(トリチウム、H3)の簡単な例として、トリチウム水(HTO)や有機的に結合したトリチウム(OBT)としての摂取がICRPによって考えられており、均一にHTOやOBTで示される物質を全身に亘って保持していることが考慮されている(保持の半減期はそれぞれ大人において10日間と40日間になり、子供にいてはさらに短くなる)(付録2Bを参照せよ)。最も複雑なモデルは骨親和性のあるアルカリ土類やアクチニド元素に対して展開されたものである(ストロンチウム、ラジウム、トリウム、プルトニウムを含む)。これらのモデルは骨における元素の振る舞いを示しており、骨の表面における初期の蓄積、骨ミネラルとの交換やその埋没、骨髄への移動を考慮している。これらのモデルの生理学的現実性は循環を介して器官や組織の間における移動を含むものになる。またリサイクルモデルは排泄データに合わせて設計されており、生物検定の解釈のために用いられることができる。他の元素のためにさらに単純なモデルはこの目的のためさらに不適切になる。

37 体内動態モデルの信頼性はそれが基礎としているデータの質に依存し、それは人間に関するデータの利用可能性を含むものになる(セクション2.6を参照せよ)。多くの元素やそれらの放射性同位元素にとって、モデルの展開や妥当性の判断のために用いられる人間に関するデータはほとんどないか全く存在しておらず、信頼性は動物における実験や化学上の類推の結果の上に委ねられるものである。動物におけるデータの人間に対する外挿により課された限界から離れて、通常の健康な大人と子供、異なった人種的、民族的グループ間に発生するまたはある人口集団の類似した個々のメンバーの間における健康状態の違いから生じる生物学的多様性の知識には潜在的に重要な欠陥が存在している。

38 気道におけるICRPモデルは肺からの粒子の拡散や部位におけるリンパ節への粒子の緩やかな動きを考慮しているが、循環内における影響を受けていない粒子の侵入を考慮していない(ICRP,1994a)。直接気道からもしくは間接的に消化管を介して血液に達する放射性核種は全体に亘って粒子の溶解に随い可溶性の形態で侵入することが仮定されている。委員会は、吸入された粒子が血液に直接取り込まれることが被曝の重要なルートを示しているかもしれないという可能性を考慮しており、特に胎児への粒子の移動の可能性における文脈の中で、そのことはICRPによって否定されていない。証拠は、血液中への高度に可溶性な粒子のある程度の侵入が長期に亘って発生するかもしれないことを示しており、それらのリンパ節からの放出やリンパ管にそった動きを含めている。しかしこのような粒子の予想されうる経過は、肝臓、脾臓、骨髄において特殊化した細胞によって血液から除去されるものになるだろう。胎盤は、胎児への移動に対する追加的な障壁になることを示している。しかし少数のメンバーは、胎児への放射性核種を含む粒子の移動が子宮内における白血病の発症に関し重要になるかもしれないとの見解を維持している。

2.5 線量測定モデル

39 個々の元素やそれらの放射性同位体に対する体内動態モデルは、所与の期間(通常70歳まで、セクション2.6を参照せよ)、特定の組織、器官、体における部位(原因となる部位)で発生する放射性崩壊(変化)のトータルの数を計算するために用いられる。線量測定モデルは個々の原因となる部位から全ての重要な器官/組織(対象)におけるエネルギーの堆積を計算するために用いられている(Eckerman,1994)。このことは、異なった組織や器官の間の幾何学的関係を示している数学的幻想を用いてなされている。この幻想は、大人、異なった年齢の子供、妊娠の各々のトリメスターにおける妊婦と胎児に対して展開されてきた(ICRP,2001)。その時、原因となる部位で発生する崩壊の数と対象となる部位におけるエネルギーの蓄積を知ることにより、グレイで測定される吸収線量は計算されることが可能になる。

42 委員会のメンバーはICRPの線量測定モデルに対する不満の多様な度合いを表明した。さらに長いレンジの放射線にとって、コンセンサスは、線量測定モデルが一般的に満足のいくものであるといったことだった。しかし、対象となる細胞や細胞内部の構造に関連して非常に短いレンジを有する荷電粒子放射(α放射体、低エネルギーのβ放射体、例えばトリチウム、そしてオージェ放射体)の不均一分布や細胞核やそのDNAに特に影響を及ぼすかもしれない最も重要なこれらの電離現象を考慮に入れるほど十分に、体内動態や線量測定モデルの空間的分割は高くないかもしれない。この問題は、特定の事例に関し、内部放射体のための線量計算において不確実性は横たわる主要な原因であり、間違いの可能性に繋がるかもしれない。メンバーは問題の認識の程度において意見が異なっているが、この分野はさらなる研究のための努力が必要とされるものの1つとして認識されるべきであることに同意している。微量線量測定法の徹底的な理解が不可欠の前提条件なるだろうと思われている。委員会は、それらのステップが資金を提供され、適切な研究を支えていくことを勧めている。

2.6 ICRPの線量係数

43 癌や遺伝的影響のリスクの点で異なった組織における吸収線量の解釈を可能にするために、ICRP(1991)は等価線量の考え方を使用している。悪性腫瘍や遺伝的損傷の原因となる異なった放射線のタイプのRBEを考慮するために、等価線量の導出過程において放射線荷重係数(wR)が用いられている(16)。したがって先に記されたような体内動態や線量測定モデルを用い得られる様々な器官/組織に対する吸収線量(1kgあたりのジュールで測られるGy)は等価線量を与えるために(単位線量ははシーベルト(Sv)(17))、α照射に対しては20というwRを、電子やγ照射に対しては1を乗じられることになる。組織線量は一般的に大人に対して50年間以上、子供に対しては70歳まで加算され、結果の値は預託等価線量と呼ばれている。

16 一見すると、放射線荷重係数とRBEは同じ量になるように思われるが、重要な違いが存在している。RBEは実験から引き出され、一般的に粒子の放射線のタイプや異なる測定点に対する値のレンジをカバーしており、これゆえそれらの測定状況に関連した経験的正当性を有している。放射線荷重係数は主観的に導出された一般的な値であり、それはICRPの判断において、RBEの観察されたレンジを考慮する所与の放射線のタイプのための最も適切な一般的な値になる。

17 明らかに異なる量であり、同じ意味で用いられるべきでないけれども、公式には、グレイとシーベルトの双方は同じ次元、1kgあたりのJ、を有していると思われる。シーベルトは物理単位ではない。

44 ICRP(1991)は、内部放射体の影響で全身線量の考え方を事実上採用している実効線量といった考え方を追加的に用いている。全身実効線量を推定するために、組織荷重係数(wT)がさまざまな組織や器官に割り当てられている。非致死性の癌の発症率や失われた人生の歳月に関し調整し、これらは、放射線に誘発された致死的な癌や遺伝的影響のトータルの発症率に対するそれぞれの寄与に重みを与えている。例えば、肝臓や肺に対するwT値はそれぞれ0.05と0.12になる。預託実効線量は適切な組織荷重係数を乗じた全ての預託等価線量の合計になる。

45 経口摂取や吸入による特定の放射性核種の単位摂取あたりの預託等価線量と預託実効線量の値(単位:1BqあたりのSv)を与え、線量推定の単純化のために、ICRPは線量係数の表を公表している。被曝人口に対する現在のICRPのリスクの推定値は致死的な癌に対して1Svあたり0.05であり、遺伝的影響や非致死性の癌を含むトータルに集約された被害に対して1Svあたり0.07になる。ICRPは、異なる年齢の大人や子供による放射性核種の摂取や母胎の放射性核種の摂取による胎児の照射に対する線量係数を公表している(ICRP,1989,1993,1994b,1995a,1995b,1996,2001)。

46 ICRPのwRやwTの値はそれぞれ等価線量や実効線量を計算するために定義されており、RBEや組織の放射性感受性における既知の違いを完全に説明していない。このように、先に議論されたように、単なる2つのwRの値の使用は、α粒子のRBEの値や異なった低LET放射線の間における観察された違いを反映していない。同様に、特定のリスクの推定値はwT値を与えられた個々の組織にとって利用可能であるが、これらの値の割り当てにおいて、それらは、0.01、0.05、0.12、0.2といった値をもつ4つのカテゴリーに単純にグループされている。実効線量(単位摂取あたりの預託実効線量)に対する線量係数は2倍に重み付けされており(18)、線量が実質的に線量限界より低い状況における計画立案の目的のために主に意図されている。ICRP(1991)は、「既知の人口の被曝において可能性が高い結果の推定のために、吸収線量と関連している放射線の相対的な生物学的影響や被曝人口に関する確率係数に関連している特定のデータを用いることがときとして好ましいことになるだろう」ということを述べている。

18 それは2つの係数、wRとwTを乗じられ計算された線量(Gy)であり、その双方は問題となる結果(癌)に対するリスクの要素を組み込んでいる。等価線量と実効線量と呼ばれる量は物理的放射線量ではない。

50 欧州放射線リスク委員会2003年勧告(ECRR,2003)の中で与えられた代替の方法論を公式化することに従事した2人の委員会のメンバーが彼らのアプローチを概説している。目的は、生物物理学的危険係数、wJと同位体生化学危険係数、wKといった追加の荷重係数を導入することにより単純で実用的な方法で、ICRPの方法論における認識されうる欠陥を是正することになる。ECRRのレポートで与えられる例は、Sr90が染色体に結びついており、同様にSr90やその後のY90の崩壊からの連続したβ放射を有し、10というwJと30というwK、トータルで300の増加を得ることになる。しかし他のメンバーは、期待されるより大きいオーダーの大きさであるSr90からのリスクに対する証拠の欠如を指摘している。また彼らは、あるレンジの放射性核種に対するECRRのレポート(ECRR,2003)で与えられたwJとwKの値はいかなる証拠や典拠にも付随されるものではないと指摘している。メンバーの大半は、この問題におけるECRR(2003)のアプローチに関する科学的長所や妥当性について説得されることはなかった。

2.7 不確実性

55 体内動態モデルの仮定における不確実性は主に、その量やそれらが基づく放射性核種の振る舞いの複雑性に基づく実験データの不確実な適用可能性から生じている(Leggett,2001,2003)。いくつかのケースでは、十分な人間に関するデータが利用可能であり、不確実性は小さいものになる(大人におけるHTOとしてのトリチウム)。他のケースでは、仮定は、動物データや元素間の化学的類似性に依存しており、不確実性は実質的にさらに大きくなる可能性がある(Pu239からの子供の骨髄や胎児に対する線量)。知識のレベルは、栄養や不可欠な元素(炭素、水素、硫黄、リン、鉄、ヨウ素、銅、亜鉛)、主要な有害な元素(鉛、カドミウム、ヒ素)、主要な放射性核種(Sr90,Cs137,U238,Pu239)における十分かつ詳細な情報に関して広範囲に亘っているが、情報は、多くの微量元素(コバルト、マンガン、セレン)や放射性核種(Co60,Tc99)においてあまり詳細でない。いくつかのさらに重要な放射性核種元素に関連した特徴は、それらは天然には発生しないことになり、それらの化学に関する知識は、生物学的に不可欠な、微量な、有害な元素より限定されているかもしれない。このことは放射線の放射の性質に関して人工核種を除外しない一方、それらの個々の化学に関する理解の現在のレベルを理由にしてそれらのいくつかを除外するかもしれない。

56 不確実性の主な原因は経口摂取され吸入された放射性核種の化学形になる(Harrison他,2001)。ICRPの線量係数は吸入された粒子のサイズや気道と消化管中の放射性核種の溶解度に関する一般的な仮定に基づいている。特定の情報は摂取における化学形に基づいて利用可能になるかもしれない。もし摂取が不溶性の粒子形にあると知られているならば、例えば、摂取されたCs137に対し一般的なモデルを用いることは不適切になるだろう。摂取が既知の化学形であるとき、気道における溶解度に関するデフォルトの仮定は特定の情報によって代替されることが可能であり、すべきである。さらなる研究がこの分野において利用できる情報基盤を広げるために必要とされている。

62 全体的にみて、線量係数における不確実性はいくつかの放射性核種(Cs137,I131)に対して小さいとみなすことが可能であるが、特に子供による摂取や胎児に対する線量を考慮すると(Pb210,Po210,Pu239,Am241)、他の放射性核種に対して実質的にさらに大きくなるとみなすことが可能になる。あるレンジの放射性核種に対する線量推定値における不確実性の信頼できる定量的推定値はまだ利用可能でない。しかし公表されたデータ(Harrison他,1998,Leggett他,1998,Apostoaei and Miller,2004)は、個々の組織/器官に対する線量のいくつかの推定値にとって、不確実性は、中央の推定値の上下にある大きいもしくはさらに大きい、ときとしてかなり大きいオーダーの90%信頼区間をもつ推定値に伴い、不確実性は非常に大きいことを示唆している(20)。これらの不確実性は放射線に誘発された疾患に対するリスクの推定値における不確実性に加わっている。

20 I131、Cs137、Sr90の摂取からの線量係数における不確実性の最近の詳細な分析は、Cs137(全ての組織)に対する約3〜6という、I131からの甲状腺線量に対する7〜8という、Sr90からの骨の表面や赤色骨髄に対する20〜40という大人(男性と女性)に対する組織線量係数における95%信頼区間になる(Apostoaei and Miller,2004)。不確実性についての大規模な研究では(Goossens他,1997)、委員会の専門家により得られる不確実性のレンジにおける関連した集計は、Harrison他(1998)によって引用された大人の経口摂取と吸入線量係数における90%信頼区間を組み合わせると、Cs137とI131の甲状腺線量に対する10以下の係数から吸入後のSr90の肺線量や経口摂取後のPu239の骨髄線量に対する数千の係数までさまざまになる。これらのさらに大きなレンジは部分的には経口摂取され、吸入されるかもしれない化学形における不確実性によるものである(Harrison他,1998)。推定される不確実性のレンジは実際研究における専門家の間において異なっている。

64 ICRPはその公表において特別に線量係数における不確実性を主張しないことを選択した。限界を大きく下回る線量における実効線量係数の適用において、不確実性を含めることでさえそのような限界が損なわれることはないだろうとの見方から、不確実性の範囲を含めることは不必要な複雑性を加えるだろうといったことが議論されるかもしれない。しかしこれはこれらの不確実性の考慮によってのみ正当化されうる仮定になる。組織や器官に対する等価線量を推定するために線量係数を用いること、そしてそのことはもしさらに詳細な情報が特定の目的のために求められるならばなされるだろうといったことを背景にして、不確実性における知見は結果を適用することにおいて重要になるかもしれない。内部放射体に対する線量の推定値における不確実性を定量化する認識と試みの意義は、このテーマにおける最近の公表によって示されるように、ICRPでの研究に寄与する人々や他の人々によって認められている(Harrison他,2001,Leggett,2001,2003)。

69 ICRPは、経口摂取や吸入から生じる推定された放射線線量における包括的な情報を与えている。ICRPは、体内動態と線量測定モデルや、等価、実効線量と呼ばれる量を計算するために用いた荷重係数の値を公表している。モデルは対象となる器官、組織、組織内の部位に対する吸収線量(Gy)の推定値を与えるために用いられる一方、等価、実効線量(Sv)は、RBE(wR)や癌と遺伝的影響(wT)からのトータルのリスクや被害に対する個々の組織の寄与を考慮する影響に関連した重みを導入している。個々の組織に対する等価線量の計算は、特定の癌(もしくは遺伝的影響)における全体のリスクを評価するために異なった放射線のタイプからの線量をいっしょにする単純で都合のよい方法であると思われる。全体的な全身もしくは実効線量を与えるために合同することや荷重等価線量のさらなるステップは、全身被曝に対する限界と比較し、内部と外部の全ての放射線被曝を合計することに対し都合がよいものである。しかし実効線量の限られた使用は、特定の組織における照射や線量の移動の経時変化の双方において、異なった放射線核種からの線量の移動における非常に異なったパターンを隠す可能性がある。実効線量は特定のタイプの癌の可能性の高い発症率における情報を与えず、誘発された癌の全体的な確率における情報を与えるのみである(タイプの区別はない)。委員会は、ICRPが線量限界以下の線量における放射線防護の目的のために実効線量の使用を担保することを勧告していることをさらに強く強調すべきであることを指摘し、また感じている。特定の評価にとって、ICRPは、吸収線量と関連した放射線とリスク係数におけるRBEに関した特定のデータを用いることがときとしてさらに妥当であるだろうといったことを勧告している。委員会は、線量が遡及的線量評価のためまたは疫学的データの解釈のためにかなりの割合の線量限界になるもしくはなるかもしれないときに、そのような特定の情報の使用が適用されるべきであると考えている。委員会はさらに、ICRPの方法論の科学的基礎は妥当性を問題にされ続けるべきであり、微量線量測定法と放射線生物学はその判断にそれらの信頼性を加えるべきであるといったことが重要であると結論づける。

付録2A
微量線量測定法における考慮

イントロダクション

(1) 物質における放射線の相互作用はそれらの確率的性質によるものであり、そのため原子や分子レベルでみたときにそれらの相互作用はエネルギーの蓄積における無限に多様なパターンを導くものである。このレベルの分割においてパターンは、荷電放射線粒子の経路に沿った分子における電離と励起からなる個々の放射線の軌跡の詳細な構造によって影響を受けている。内部放射体のケースでは荷電粒子は主に、放射されたβ粒子やα粒子そしてそれらが双方のケースで生じさせる二次電子になる。放射線の軌跡の内側や間における全ての不均一性は、細胞の次元における組織や器官にまで分割のレベルを低下させることを考慮すると、低下した程度に関して反映されたものになる。吸収線量は定義された質量における平均された巨視的量になり、その質量におけるエネルギー蓄積の空間的分布を考慮していない。したがって組織における吸収線量の使用や、同様に組織(等価線量)や体(実効線量)に対してそれから導かれたICRPのリスクに関した量に対するその拡張は、平均が実用的な適用のための十分な情報を与えるという考慮の下の暗黙の仮定を形成している。この仮定における不備はよく認識されており、著しく異なったタイプの軌跡の構造における放射線の生物学的影響における平均の違いをいくらか考慮するために放射線荷重係数、wR(以前は質係数、Q)の導入によって、部分的にICRPによって補われた。

「比例計数管」微量線量測定法

(4) ICRU/ICRPのタスクグループの1983年レポートは比例計数管アプローチに特に焦点を当て、放射線防護におけるその適用に対して提案を行った。これらの提案は、放射線質係数や放射線荷重係数を定義するICRPによって慣例的に用いられたLETの量が示すより良い放射線の質に対する説明を与えられる1μm以下のレベルで測定された量を意味する仮定に基づいてなされている(ICRU,1983)。直径1μm以下〜10μmの組織の量をシミュレートすることができるロッシ比例計数管として知られる初期の測定装置からの情報に基づき、ICRUレポート19(1971)は以下の微量線量測定法に関するこの派生を使用することにおける量を定義している。

付録2B
トリチウムにおける線量とリスク

イントロダクション

(1) 委員会は、トリチウムに対するICRPの線量係数の妥当性や内部放射体としてのトリチウムの影響における評価に対する考慮に特別な注意を払っている。これはHarrison他(2002)による最近の論文に対する考慮を含むものであり、トリチウム水(HTO)と有機的に結合したトリチウム(OBT)による被曝に対する線量係数における不確実性を検証しており、また多くの委員会からの内部文書、2点がHarrison他と同じトピックを扱っており、1点がトリチウム化合物や細胞や細胞内のスケールにおけるトリチウムの放射線の特性を検証しているが、それらを含むものになる。この見直しの一環として、別の観点が考慮され、大人におけるHTOの摂取に対するICRPの線量係数は10倍過小評価されていることを含むもになる。トリチウム標識されたDNA前駆物質の特別なケースも同様に考慮されている。

ICRPの線量係数

(6) ICRPはモデルを与え、HTOやOBTのようなトリチウムの摂取に対する線量係数を計算している。モデルは、母胎による摂取に随う胎児に対する線量同様、大人や子供による経口摂取や吸入によるHTOやOBTの取り込みを考慮している。モデルは多くの単純化された仮定を前提にしている。まず、血液における吸収が全てであり、トリチウムはその後体の組織全体に均一に分布すると仮定されている。次に、その体組織における滞留は2つの要素によって示され、1つ目は体水分の交代時間と一致しており、2つ目は炭素の交代時間に一致しており、さらに幼い子供において双方の要素の滞留時間はさらに短いものになる。最初の要素は、有機分子に対し交換可能な状態で結びついており、基本的に体水分と均衡状態にあるHTOやトリチウムに一致しており、2番目の要素は交換不可能な状態でOBTと結びついているものと一致している。ICRPはOBTの特定形に対する線量係数を与えていない(H3-DNA前駆物質)。OBTの摂取のための線量係数は例えば特定されない食事摂取量に対して適用される一般的な値である。

ICRPの線量係数の妥当性

(7) Harrison他(2002)は、HTOやOBTに対する現在のICRPの線量係数が基づいている実験や人間に関するデータを見直し、人口集団に対し代表する推定値における不確実性の点で線量係数の信頼性を評価した。分析は、血液に対するOBTの吸収、体組織に対するOBT中のトリチウムの取り込み、組織における滞留時間、γ線と比較されたトリチウムのβ放射の相対的、生物学的影響における不確実性を含んでいる。組織や細胞における線量の不均一性も同様に論文の中で考慮されている。この分析の結果は、HTOに対し約3という係数、OBTに対し約5という係数をもつ大人に対し単位摂取量あたりの線量の中央値において5%から95%までの不確実性のレンジを示しており、子供や胎児に対する線量においてさらに大きな不確実性を示している。これらの分析における中央(50%)値は対応するICRPの値の約2倍であり、主にトリチウムのRBEに対し1から2.5までのレンジを含むことが理由として挙げられる。この分析においてOBTを考慮することは一般的な食事摂取量に対し適用され、DNA前駆物質を含む特定の有機形が個々を基礎にして考慮されるべきであることが明らかにされている。

(8) 委員会で考慮されたトリチウムにおける2番目の論文は、生物圏における水素原子と交換されるその傾向、代謝反応を経由して有機分子と結びつくその能力、環境中の水のような急速な分布、1より大きいRBE値に関する実際の証拠、関連した微量線量測定法の考慮を含むトリチウムの多くのユニークな特性に注目している。この論文の以後のバージョンは、トリチウムに対する単位摂取量値あたりの現在のICRPの線量が、Harrison他によって示唆されるような2という数値よりむしろ、約10倍低すぎることを示唆している。このことは1から2と3の間までのトリチウムの放射線荷重係数が増加していることから生じており、HTOの摂取から生じるOBTの体内における滞留時間を認めるものであり、トリチウムの崩壊の軌跡からの高レベルの密度の電離を含む、微量線量測定法の考慮を認めるものである。

(10) 委員会は、RBE値に関するICRP(2003)による最新のレビューがトリチウムにおけるRBEの証拠を考慮しておらず、ICRPはwRがトリチウムのβ放射を含む全ての光子や電子に対して1になるべきであるといった以前の見解を維持していることを知らされている。この問題は以下のパラグラフ13でさらに考慮される。

トリチウム標識されたDNAの前駆物質

(11) OBTに対するICRPの線量係数はトリチウムの特定の有機形の摂取に適用されない。トリチウム標識されたDNA前駆物質が実質的にトリチウムの他の形よりさらに高い線量と影響の原因となる可能性は長く認識されてきており、実験における研究と理論的な考察の点でかなり注意を払われてきた(ICRP,1979,NCRP,1979)。委員会はこのテーマにおける証拠を考慮しており、それらの大半はトリチウム標識されたチミジン(H3TdR)を用いた試験管内や生体内の研究に関連している。例えば培養マウス細胞におけるHPRT突然変異の研究では、Ueno他(1989)はH3TdRとHTOに対するRBEの値の間における2という係数の違いを報告しているが、H3アミノ酸とHTOは有意に異なっていなかった。この比較は、細胞核に対する線量の推定値と平均細胞線量に基づいた6という係数への転換に基づいている。細胞核の線量に基づいた実際の2という係数の違いは、変異の影響(H3からHe3への変化の化学的影響)や細胞核内における線量の局部的な分布に起因しているかもしれない。変異の影響における期待された違いにもかかわらず、チミジンの[6-3H]と[METHYL-3H]の間に違いは観察されなかったことが認められている。

結論

(13) 委員会は、放射線生物学の理論とトリチウムのRBEが1より大きいといったRBEの実験から多くの証拠が存在することを認めている。全ての観察されたHTO被曝の影響を考慮すると、RBEの値は1〜3.5のレンジの中に存在する。γ線との比較において、大半の値が1〜3になる一方、X線にとって大半が1〜2になり、1〜1.5の値が顕著であった。トリチウムのβ照射に対するこれらの測定されたRBEは微量線量測定法の考慮に基づいた推定値とかなり一致している。人間における癌誘発に対するトリチウムRBEの推定値に最も関連しているので、何人かの委員会のメンバーは動物における発癌の研究に言及している。マウスにおける乳腺腫瘍および急性骨髄性白血病の研究は、X線と比べて約1の値になった(Gragtams他,1984,Johnson他,1995)。メンバーは、トリチウムからの等価線量におけるICRPの計算におけるwRの使用のためのトリチウムRBEのデータの含意における見解について意見が異なっている。何人かは、一般的な放射線防護のために全ての低LET放射線に対し1という単一のwRの値をICRPが使用することを支持したが一方、他は、ICRPが普通にトリチウムのβ放射に対し2以上のwRを適用するべきであると考えていた。

(14) 何人かの委員会のメンバーは、RBEに追加される係数はトリチウムに対するICRPモデルで否定されており、現在の線量係数は約10倍過小評価されているかもしれないと考えている。ECRR(2003)レポートに貢献しているこれらのメンバーはトリチウムに対して10〜30のwR値を指摘している(第2章のテキストを参照せよ)。他のメンバーはHTOに対するICRPの線量係数は事実過小推定値ではないと結論づけており、特定の物質に適用しないほうがよいことを理由に、OBTに対する値は注意をもって用いられなければならないと指摘している。

付録2C
オージェ放射体における線量とリスク

(1) 委員会は、オージェ放射体により示される問題を考慮しており、現在のICRPの方法論がDNAに結びついたオージェ放射体の増加したRBEを考慮していないことを指摘している。

(3) オージェ放射体は、核種や器官と細胞におけるそれらのエネルギーの均一分布の仮定を含むICRPの線量モデルで用いられている現存の線量測定法上の慣例について難しい問題を投げかけている。多くの著者が代替の線量測定システムを議論している(Hofer,1998を参照せよ)。Bingham他(2000)は特に、DNAに結びつけられた割合に対し、確率的影響に対する全てのオージェ放射体を理由にして、20というwRを勧告している米国医学物理学会(AAPM)(Howell,1992,Sastry,1992)によって用いられているスキームに言及している。このスキームを用い、DNAに100%結びついていると仮定すると、Goddu他(1996)は、線量の例がGa67、Tc99m、I125から精巣の中に移動すると考えており、通常の線量測定法はそれぞれ約4.2倍と8倍過小推定するだろうと示している。他の組織から貫通している放射線による高い線量はこの分析で考慮されないので、等価線量における実際の増加はGoddu他(1996)によって計算されるより低くなるだろう。AAPMの方法は、DNAに結びついている割合がそれぞれ0.5と0.2であると仮定して、Cr51やZn65から前立腺に対する等価線量を推定するためにBingham他(1997)によって適用されている。線量はCr51に対して1.5倍、Zn65に対して3倍普通に計算された値より大きくなる。

結論

(7) 委員会のメンバーは、組織内の細胞の間における細胞の位置と不均一分布を基にしたオージェ放射体からの増加したリスクの可能性は個々の放射性核種と懸念される化学形に対して検証されるべきであることに同意している。細胞核に有意に存在することを示すこれらの放射性核種/化学形に対する生物学的影響の研究とともに、このことは分布の実験的な研究を伴うだろう。ICRPはオージェ放射体に対するこれらの不確実性を認めており、ICRP(Pub.92)(2003)において、それらは特別なケースを示しており、特別な注意を払われ続ける必要があるだろうと述べている。

付録2D
α放射体における線量とリスク

(3) しかしSimmonsにより達せられた結論は他の研究からの示唆と対照をなすと思われる。Harrison and Muirhead(2003)によって議論されているように、人間における放射線に誘発された肺癌に対する同様のリスクの推定値は、ラドン(職業上、生活上)やプルトニウム粒子(マヤークの労働者)からと外部低LET放射線(原爆生存者)からの非常に異なったα粒子被曝から得られている。α粒子のRBEを考慮すると、線量移動の経時変化やPu239の酸化粒子からのエネルギーの蓄積の不均一性にもかかわらず、得られたリスクの推定値は同様である。組織における局所的に激しい粒子のα照射からのリスクにおける特定の問題において、異なったサイズのPu239酸化物粒子やPu239クエン酸塩の投与の後染色体異常や肝臓における癌の動物における研究は、影響は平均組織線量に関連していると示唆している(Brooks他,1974,1983,Barcellos-Hoff and Brooks,2001)。著者は、最大の粒子に対する1%以下の細胞と比べて、最も小さい粒子に対するPu239クエン酸塩を投与した後、全ての細胞がα放射の軌跡の横断を被っていると推定している。同様に、トロトラストからのα放射に対する不均一な組織被曝や一様な低LET放射線被曝の後、人間における放射線に誘発された肝臓癌や白血病に対するリスクの推定値の比較は激しい粒子の照射による影響の予期せぬ増大の証拠を示していない。Charles他(2003)による評価の全体的な結論は、ICRPによる平均組織線量の使用は3という係数の範囲におけるいずれかの方法で癌のリスクにおける合理的な推定値を与える可能性があるということだった。しかし一部の委員会のメンバーは、影響が観察されうるそしてさらに低いやや活動的な粒子からのさらに低い線量における影響を潜在的に増大するかもしれない可能性を除外しない線量と、必然的に利用できるデータが関連していることを指摘している。

胎児への吸入された粒子の移動

(4) 吸入された粒子の振る舞いはICRP(1994)によって広範囲に評価されている。肺胞上皮細胞は約0.1μmの直径の細胞内小胞を含んでいる。血液からのそして細胞間における特定の高分子の通過に対し責任が存在するが、直接血液へではなく間質組織の中やそこからリンパ管にさらに小さい粒子(0.1μm以下の直径)の取り込みのルートを与えるかもしれない(Lehnart他,1986)。しかし大半の粒子は肺胞マクロファージによる食作用性の取り込みによって除去されている(例えば、Brain,1988を参照せよ)。粘膜毛様体の流れにおいて肺から除去される気管支までにおいて大半は行われている。他のマクロファージは肺胞上皮を介して移動し、リンパ管に達している。吸入後非常に小さな粒子が血液中に入るかもしれないといった証拠が存在している。Stradling他(1978a,1978b)は、Pu239O2やPu238O2といった1nmの粒子は急速に血液中に移動する一方、25nmの粒子の移動はほとんどなく、毛細血管内皮細胞中の膜細孔(最大4nmの直径)を通じた受動拡散により1nmの粒子の通過と一致している。血液に達したプルトニウムの組織おける分布は粒子の溶解と一致しており、それは主に骨格や肝臓における滞留といったことになる。

結論

(10) 委員会のメンバーは、体内における放射性粒子の振る舞いにおける利用可能なデータが、それらの粒子が容易に胎児に移動し、子宮内における高い白血病のリスクをもたらすといった提案を支持しないことに同意している。しかし可能なリスクの程度に関し同意はなく、個々のメンバーは追加的なデータを与えるかもしれない研究の進展を指摘している。また気道のICRPモデルは一般的な循環に対し粒子において認識されているリンパ液上の動きを説明していない欠陥を抱えていることが指摘されている。

3 生物学的証拠

3.4 ミニサテライト変異

9 以前のソビエト連邦(FSU)における照射された人々の子孫における変異率に関する一連のレポートにより、委員会の関心はミニサテライトと関連したDNA配列にあった。マウスに関する遺伝的研究からの追加的データもまた考慮されていた。委員会はこれらのデータと、低線量によるこれらのDNA配列の不安定性の証拠は低線量を照射された人々の子孫における遺伝性疾患のリスクの、特に体内放射線の点で、現在の推定値(ICRP,1991,UNSCEAR,2000)に対して大きな課題を提起しているといった主張を考慮している。人間やマウスにおける研究の双方において、報告された変異は非常に高い頻度で発生し、通常の直接被害を及ぼす放射線の変異に対するメカニズムによって説明されており、おそらく放射線被曝による生殖細胞系に誘発されるゲノムの不安定性を含む、多少の予期されないプロセスからそれらは生じることが示唆されている。委員会の研究や見解における主な要素は付録3Bで概説されている。

3.5 放射線防護のための含意

14 それにもかかわらず、これらの現象が高いか低い線量において放射線リスクに関しいかなる役割を有しているかを理解するために試みがなされることは重要である。放射線に誘発されたゲノムの不安定性やバイスタンダー効果における現在の大半のデータは試験管内の研究からのものになるが、その現象は齧歯類の生体内において同様に例証されている(Pampfer and Streffer,1989,Pils他,1999,Watson他,2000,2001,Xue他,2002)。ミニサテライトの不安定性はカザフスタンでの核実験からの放射線に被曝された人々、彼らの被曝していない子供や孫(Dubrova他,2002a)、そして全てではないがチェルノブイリ事故後のいくつかの研究において報告されている(Livshits他,2001,Kiuru他,2003)。ミニサテライトの不安定性は原爆生存者(Kodaira他,1995)や放射線療法の患者(May他,2000)において観察されていない。このことは、低レベル被曝、慢性的な体内放射線は急性の大きな放射線量に対する被曝とは異なった結果を有している可能性があるといった証拠を与えている。このような証拠は以前に想定されたDNAのメカニズムに基づいた期待に反しているだろうが、これらは放射線に誘発されたゲノムの不安定性の存在によって現在疑問視されている。しかしこの章や付録3Bにおいて、かなりの不確実性はこれらの現象の誘発に関する一貫性を記載している。このため何人かのメンバーは内部と外部の放射線に対する異なった反応があるとの議論をかなり弱いものとみなしている。

3.10 人工と自然放射線核種の比較

38 委員会は、自然によるそして人工による放射性核種の非常に広い種類の間においていくつかは他より危険であるといったことを認識している。しかし危険の程度はそれらの起源でなく、個々の物理学的、化学的、放射線学的特性に依存している。もちろん、これらの個々の特性は個々の放射性核種の摂取からリスクを評価することをしっかりと考慮に入れるべきである。大部分、このことはICRPの体内動態や線量測定モデルにおいてすでになされているが、メンバーは、それらの特定の特性やミクロ分布のため、さらなる詳細な評価がいくつかの放射性核種(例えば、トリチウムやオージェ放射体)や化学形に対して求められるといった程度において意見が異なっている。委員会は全会一致で、放射性核種はそれらが人工によるもしくは自然に発生しているものかどうかに応じたそれらの差を本質的に認めていないことに同意している。

3.11 結論

40 セカンドイベント理論、激しい粒子の理論、2つのフェーズをもつ反応、人工的な放射性核種と自然の核種との比較において、2人のメンバーはともに、これらの理論は、現在のICRPのリスクモデルが非常に不正確であり、2ケタ、3ケタもしくはそれ以上のオーダーの大きさで放射線リスクの正しいレベルを過小評価する可能性があることを意味していることを考慮している。委員会の約3分の1はこれらの理論やICRPのリスクの推定値がかなり不正確であるといった見解と意見を異にしている。他の3分の1は同様に上記の理論に同意していないが、ある場合には異なった理由であるけれども、現在の放射線リスクはまだひどく過小評価されているかもしれないと考えている。以下や第2章を参照してほしい。

41 委員会のほとんど半分のメンバーは、これらのメカニズムにおける生物学的証拠(パラグラフ39を参照せよ)は十分に現在のICRPのモデルに反映されていないといった見解を有している。現在のリスクはそれゆえ、少なくともある程度、そしておそらくいくつかの核種においては大幅に、過小評価されている可能性がある。これらの過小評価はいくつかの疫学的知見を説明することができ、特にCOMAREが観察された白血病の発症率がNRPBによって推定されるリスクより約200〜300倍大きくすることを求めるだろうと結論づけたシースケールにおいて説明することができるといったことは可能性があるとこれらのメンバーは考えている(COMARE,1996)。これらのメンバーは、これらの生物学的メカニズムが別々にというより(つまり加算的)ともに(つまり乗算的)作用する可能性があり、リスクにおける観察された増分を説明するために求められるレベルにまでリスクを高めることを指摘している。

44 放射線の生物学的影響における新しい知見が低線量における健康上のリスクやそれらの定量的な不確実性の考慮の中に含められることを継続するべきであるといった一般的な合意があった。この点で委員会は、1990年に定式化されたICRPの現在の勧告がこの章で議論されている生物学的情報の多くより古いことを認識している。委員会は、特に微量線量測定法、誘発されたゲノムの不安定性、バイスタンダー効果、癌のメカニズム、生殖細胞系におけるミニサテライト変異の点で、継続的な国内および国際的な放射線生物学の研究を承認した。

付録3A
セカンドイベント理論における生物物理学や生物学的側面

(3) Busby(1996)による計算は、細胞充填、3本以上の軌跡の分布、細胞あたりのイベントの数の推定値、イベントの独立したオーダーに関連した計算/統計学上の問題のために、疑問が残っている。Busbyのモデルに基づきSr90における上昇した値はEdwardsとCoxにより1.3以下として与えられている。モデルは2つがヒットするプロセスに基づいているため、細胞の線量反応は低線量の単一の減衰同位体に対しかなり曲線的になり、DDREFに対する現在のICRPの判断がわずかに2である一方、腫瘍形成に対し非常に高い線量と線量率効果係数(DDREF)を予測するであろう。

付録3B
生殖細胞におけるミニサテライトDNAの変異

(3) 委員会は、以前のソビエト連邦(FSU)における放射線に被曝した個人やかれらの子供における一連の研究や、これらが放射線による生殖細胞突然変異の新しいメカニズムを示しているかもしれないといった提案を考慮している。低線量により被曝した子孫と対照グループとしての両親における不安定なミニサテライトの変異の頻度の比較に基づいたこれらのレポートのいくつかは、照射後の非常に高い誘発された変異の頻度を示唆している。これらと他のデータは、放射線に誘発されたミニサテライト変異からのありうる健康への影響に疑問を呈している(Bridges,2001を参照せよ)。またかれらは、照射後の人間における遺伝的リスクに対する現在の判断は総じて過小推定値になるとの主張を求めている(ICRP,1991,UNSCEAR,2000)。

(9) チェルノブイリ事故後放射性核種によってひどく汚染されたウクライナの地域における住民の間のミニサテライトにおける生殖細胞系の突然変異の研究が報告されている(Dubrova他,2002b)。対照グループは、チェルノブイリ事故後、1976〜1986年の間に生まれた98人の子供になる。被曝されたグループは、チェルノブイリ事故後、1987〜1996年の間に生まれた240人の子供になる。家族は民族、母親の年齢、両親の職業、喫煙習慣の点で一致していた。統計的に有意な1.6倍におよぶ突然変異率における増加が被曝された父親の子供において見受けられた。突然変異率における増加は1986〜1995年の子供の生まれた年にかかわらずこの地域において見受けられ、蓄積した両親の線量はミニサテライト変異の誘発に関係がないことが示唆されている。著者は、初期の急性被曝がこの増加を説明し、人間における自発的なミニサテライト変異が主に減数分裂における組み換えにより発生するので、影響は、事故時から1995年まで続いている減数分裂期におけるその後のミニサテライトの不安定性を生じる誘発された不安定性に起因していることを考慮している。しかし別のFSUの研究において、ミニサテライトの遺伝子座における突然変異率は照射後の誕生年とともに減少しており、これらの遺伝子座における世代を超えた不安定性は一貫して説明される影響にならないことを示唆している。

放射線からの人間の遺伝的リスクにおける現在の推定値

(10) 一般的に委員会は、ミニサテライト/ESTRにおける生殖細胞系の突然変異率とその根本的なメカニズムにおいてかなりの科学的関心が存在しているが、競合する知見、線量測定における不確実性、方法論的問題のため、データにおける定量的解釈が困難になっていると認識している。それにもかかわらず、これらのデータが原則として、人間の遺伝的リスクにおける推定値を与えるために、国際的に用いられる方法(ICRP,1991,UNSCEAR,1994,2000)にどのように影響を与えているかに対し注意が向けられている。簡単に言えばこれらの方法は、放射線に対するその人口における遺伝的疾患の頻度の反応を推定するために、人間の遺伝性疾患におけるデータと遺伝子/染色体の突然変異率における人間/マウスのデータの組合せを用いている。定義からこのことは、DNAの反復配列における機能と関連しない変異、例えばミニサテライト/ESTRの遺伝子座がわずか1週間しか遺伝的疾患に関連していないことよりむしろ機能における遺伝子/染色体変異に対する考慮をもとめている。この基礎付けのみにより、委員会により考慮されるミニサテライト/ESTRの研究は人間の遺伝的リスクにおける推定に限定的に関連していると多くの人々によって判断されている。

4 疫学的証拠

4.2 ありうる線量反応関係

10 低い統計的検出力の問題は特に低線量における線量反応曲線の形状に関連している。線量反応は、放射線からの被曝によって誘発された特定の影響(例えば、癌)の大きさは組織によって吸収された放射線の量、つまり線量とともに変化するように近似されている。確率的影響(癌や遺伝性疾患)にとって線量反応曲線は高線量に対して適切に合理的に良く定義されており、高線量における細胞死によりリスクが減少する前に、線量とともにしっかりとリスクが上昇することを示している。低線量における線量反応関係における形状はさまざまな臨床的結果に対し異なった方法で解釈されることができ、確率的影響に対し最も広く許容された曲線は線形閾値なし(LNT)の形状になる。このことは名前が示すように、反応の発生率が低線領域を超えた線量に対し直線的比例関係で増加することを意味しており、それ以下で影響が生じない閾値は存在しない。低線量におけるLNTの定式化はICRPによって好まれているが、委員会の何人かのメンバーによって議論されている。さまざまな可能な線量反応関係は第2章の図2.1において例示されている。

11 委員会は、低レベルの被曝に関連した疫学的データは被曝のレベルとともに内在するリスクの変化を示している幅をもつ曲線と一致しており、LNTの関係より険しい曲線(超線形曲線)、あるレベル以下においてリスクが存在せず(閾値)、危険予防効果(放射線ホルミシス)さえも含むものであることを考慮している。委員会は、どのタイプの線量反応が最も説得力のある利用可能な科学的証拠の記述になると考えられているのかに関し意見が分かれている。最も強く閾値やホルミシスの存在を信じている委員会のメンバーは彼の結論を機械的議論やいくつかの研究から得られている結果の彼における解釈に基づかせている(Rowland,1994,Thomas,1994,Voelz他,1997,Ghiassi-nejad,2002,Calabrese and Baldwin,2003,Cameron,2003)。しかし委員会の大半は、好ましいリスクモデルとして放射線ホルミシスや閾値に対する疫学的証拠は説得力がないものであると考えている。

4.4 放射性降下物に対する被曝

4.4.1 チェルノブイリ後

小児白血病

27 ウクライナのひどく汚染された地域において1986年には生まれている10歳以下の子供における白血病の発症率の有意な増加が、わずかに汚染された地域に生まれた子供における発症率と比較された上で、Noshchenko他(2001)によって報告されている。ウクライナの2つの最も汚染された地域におけるチェルノブイリ事故時に0〜20歳だった居住者における白血病のその後の症例対照研究(Noshchenko他,2002)は、評価された線量との有意な関連を見出しており、その関連は幼い子供のときに被曝した人々における急性白血病について最も強いものであることを示している。しかし、確認された白血病の症例の3分の1以上のみ(98)がこの研究に含まれており、著者は彼らの知見の解釈に対し注意を促している。汚染のレベルにともなう子供の白血病の発症率の変化はベラルーシにおける異なった地域において見受けられなかった(Gapanovich他,2001)。同様に子供の白血病の発症における有意な増加は中程度に汚染されたスウェーデン(Hjalmars他,1994,Tondel他,1996)やフィンランド(Auvinen他,1994)においても発見されなかった。

29 1986年7月〜1987年12月に誕生した子供の白血病の発症率のレベルの増加(前述のパラグラフ19において議論されたように)に関し、ギリシャ(Petridou他,1996)、西ドイツ(Steiner他,1998)、ベラルーシ(Ivanov他,1998)で行われた出生コホート研究の結果と対照的に、これらの研究はこの期間に生まれた1〜3もしくは1〜4歳の幼い子供の間における白血病の発症率における増加に関しほとんど示唆を与えなかった。したがってチェルノブイリ事故後すぐに生まれた子供に関する白血病のリスクの増加の過小推定は子供の後年に関して保持されるとは思われていない。

子供の甲状腺癌

31 委員会は、チェルノブイリ事故時のFSUにおけるひどく汚染された地域に居住する子供における甲状腺癌のリスクの実質的な増加に対する証拠が大量に存在することを受け容れている(UNSCEAR,2000)。また委員会は、例えば甲状腺線量を正確に評価することが困難であるため、これらのデータからのリスク係数の導出に影響しているかなりの不確実性を認識している。それにもかかわらずチェルノブイリのデータから導かれる小児甲状腺癌のリスクの推定値は、治療目的のための外部放射線源により被曝した子供のグループから得られる推定値と大幅に相違するものではない(Ron他,1995)。

アメリカ合衆国

34 Archer(1987)は1949〜1979年におけるアメリカの子供や青少年(5〜19歳)の白血病死を検証しており、核実験からの被曝がより高い期間と場所においてさらに高い割合になることを見出している。彼の研究から導かれる放射線リスクは現在のリスクモデルにより予測されたものと類似している。白血病における地域の違いは、食料、牛乳、人間の骨にSr90が濃縮することを用いた複合被曝指標に一致している。何人かのメンバーは、この研究が標準的なリスクの推定値から予測されるより大きいSr90による内部被曝からの増加したリスクを暗に意味していると結論づけている。Archerの研究の1つの主要な問題は、それが死亡率の研究ということであり、それゆえフォールアウトによる被曝に関連しているかもしれないパターンは、全ての地域で一定の割合で変化していないかもしれない変化している背景にある割合に対して見出されなければならないということになる。このことはArcherの研究結果を解釈することを困難にしている。

北欧諸国

36 北欧諸国は、大気核実験のピークの期間において国家的な癌記載の高い質を維持している。Darby他(1992)は、核実験フォールアウトからの放射線被曝に関連した合計北欧5カ国における小児白血病発症率における一時的な傾向を検証しており、(a) 生後の子供、(b) 子宮内の胎児、(c) 父方の精巣を含むものになる。付近の中間的な被曝期間と比較して高い被曝期間において白血病の発症率は有意に上昇しており、15歳以下の子供に対し相対的なリスクの増分は0.07(95%信頼区間は0.00、0.14)になり、5歳以下の幼児に対し相対的なリスクの増分は0.11(95%信頼区間は0.00、0.24)になる。これらの相対的なリスクの増分は統計的に有意であるけれども、増分の大きさは小さいものになる。それらは同様にやや大きなリスクと一致しているけれども、標準的な放射線リスクモデルによって予測されるリスクとも一致している。

イギリス

39 2つの主要な研究は、核実験にともないイギリスにおける小児白血病に対し行われている。DarbyとDoll(1987)は、核実験のピーク後における小児白血病による死亡率と発症率を検証し、リスクにおける深刻な過小評価の証拠を見出さなかった。しかし小児白血病による死亡率は1960年代にピークに達しており、その後治療の改善により減少し、この研究時に利用できる期間の英国の小児白血病におけるデータの質には疑問が残り、結果を解釈することを困難にしていた。HaynesとBentham(1995)は、小児白血病の死亡率と記載率がフォールアウトの影響から期待されるものと反対に、さらに高い降雨の地域よりさらに低い降雨の地域において一般的にさらに大きくなることを見出している。しかし最も高いフォールアウトの期間においてこのパターンは0〜4歳のグループにおける死亡率について逆転しており(発症率に対してではない)、それは乾燥した地域における死亡率の増加とともに組み合わさって、降雨の多い地域における死亡率の減少によるものである。割合におけるこの複雑なパターンはフォールアウトに関する解釈を困難にしている。著者は、結果が生存や記載における変化もしくは記載のケースにおける偶然の機会によって説明されるかもしれないと結論づけているが、かれらはフォールアウトからの放射線による低線量がイギリスにおける幼児の白血病のリスクの増加を説明している可能性を除外していない。HaynesとBentham(1995)はこの仮の結論を掘り下げようとせず、フォールアウトの影響を定量化しようともしなかった。

41 また委員会はそのメンバーの1人からの論文の内容を考慮しており、それは北欧諸国やイギリスに対し利用できる加工されていないデータから得られる5歳以下の幼児における白血病の発症率をコネチカット州、サスカチュワン州、ニュージーランドにおけるこの年代の公表された白血病の記載率と比較している。これらの国、州、地方は核実験のフォールアウトのピーク時をカバーしている信頼できる小児白血病の記載データを有する主体になる。分析は8つの記載主体(さらにかなり低いフォールアウトを経験した南半球にあるニュージーランドを含む)から導かれる割合に対して一貫性を示しており、放射性核種のフォールアウトによる被曝のリスクがかなり過小推定されているならば予測されるだろう1960年代半ばと後半における小児白血病の顕著な増加の証拠は存在していない。

4.5 原子力施設付近または沿岸や河口地域における発癌率

4.5.1 原子力施設付近の地域における発癌率

セラフィールドとダウンレイ

48 2人のメンバーは海への放出から生じる放射性物質の粒子からの放射線と小児白血病の増加が結びついている高い可能性が存在していると信じている。彼らは、放射性核種の海から陸への移動の事実とさまざまな地域における沿岸や河口付近の癌発症率と死亡率の増加の疫学的研究に対して注目していた(以下と付録4Cを参照せよ)。再処理からのさらにかなり高い放射性核種の放出により。リスクは原子炉よりむしろ核燃料が再処理される施設付近で最も高くなるだろう。彼らは、フランスのノルマンディーにあるラアーグ再処理工場周辺で行われた小児白血病に関する症例対照研究において、PobelとViel(1997)が妊婦と子供による地元の海岸の利用と子供による地元の海産物の消費における統計的関連性を見出していると指摘している。Urquhart他(1991)はダウンレイ周辺における同様の研究における子供による地元の海岸の利用との関連性を見出している。しかしこれらの関連は自己申告の習慣における情報に基づいており、Gardner他(1990)はさらに高い海洋放出を行っているセラフィールド付近における関連性を見出しておらず、これらの著者はこのように得られる潜在的に低い質のデータに対し警告を行っている。

49 またこれらの2人のメンバーは、O'Donnell他(1997)の研究がセラフィールドから遠く離れたところに居住しているイギリスやアイルランドにおける若い人々から矯正目的のために抽出された歯におけるプルトニウム濃縮の有意な減少を見出していると指摘しており、彼らは、そのことがセラフィールドからのプルトニウムにより人々が広く汚染されている証拠になると信じている。他のメンバーは、この結果はセラフィールド付近で集められた歯におけるデータによってかなり影響されており、このトレンドは過大に解釈されるべきではないと指摘している。部検調査は施設に近い地域に長く居住している住民の肺にセラフィールドからごく初期に大気放出された痕跡を示す同位体組成を有するプルトニウムを見出しているが、他の生物検定における情報は海に放出された放射性物質の体内における顕著な存在を支持していない(Stather他,1988,Popplewell他,1989)。ダウンレイ付近やグラスゴーで生活している白血病の影響を受けている子供やこれらの地域における健康な子供や大人の尿におけるプルトニウムに関し微妙な部分を示す研究は、プルトニウムの濃縮において核実験のフォールアウトを背景に有する人々からの逸脱を見出していない(Watson and Sumner,1996)。

4.5.2 イギリスの沿岸や河口部における発癌率

55 委員会の何人かのメンバーはグリーン・オーディットにより用いられる方法論やデータを強く批判しており、そのメンバーは多くの未公表のレポートを生み出しており、これらの研究における結果の妥当性を受け容れていない。グリーン・オーディットの研究における方法論はかなり疑わしく、信頼できない結果になる。またこれらの研究はCOMAREによって厳しく批評されている(2001,2003a,2004)。委員会のメンバーはいくつかのグリーン・オーディットの研究に対し詳細に批評された評価を用意しており、そのレポートにおいて重大な欠陥を見出しているが、グリーン・オーディットの研究における著者は一般的にこれらの批評を受け容れていない。しかしグリーン・オーディットは、ブラッドウェル地方における初期の研究で用いられた癌死亡率のデータが間違いを含むものであることを受け容れていないが、これらは訂正されている。また重大な矛盾が、ウェールズの沿岸地域で生活している幼児における白血病のリスクの顕著な増加を示していると思われる研究においてグリーン・オーディットによって用いられているウェールズの小児白血病における記載データに見出されている。またCOMAREは、これらのウェールズのデータ(元来、以前のウェールズにおける癌の記載によってグリーン・オーディットに与えられている)は明らかに間違いであると結論づけている(COMARE,2001)。削除された元のデータにおける矛盾を抱えている2番目のデータセットはウェールズの沿岸地域におけるグループの有意に増加されたリスクを示していない。グリーン・オーディットの研究に依存している2人の委員会のメンバーは、かれらはこれらのデータが必然的に間違っていることを受け容れていないけれども、1番目のウェールズの小児白血病のデータセットはCERRIEの目的のために除外されるべきであることに同意している。しかし同時期のレポートはウェールズにおける小児白血病の高い割合が元の記載されたデータにより暗に示されるものであることを確認しておらず、これらのデータは正常でない状態で切り離されたままである。2番目の(同意されている)ウェールズのデータセットに基づくと、ウェールズの沿岸付近における小児白血病の増加されたリスクに関し、初期のグリーン・オーディットの主張のための証拠はほとんど存在していない。

4.6 原子力産業の労働者とその子供たち

62 Gardner他(1990)による、子供をもうける前のセラフィールドの労働者によって被曝される外部放射線の線量と彼らの子供における白血病の発症率の間における相関の結果は当初、内部放射体による精巣の照射が役割を演じていると示唆されていた。しかしセラフィールドの労働者におけるその後の研究は、外部線量の関連性を確認する一方、内部放射性物質に対する被曝との同様の関連性を見出していない(HSE,1993,1994,Hodgson他,1994,Dickinson and Parker,2002)。さらに外部線量の関連性は子をもうける前の照射に関する仮説を生み出した研究から独立したデータを用いた研究によって確認されておらず、これらの地域における影響を及ぼされた子供の大多数が子をもうける前に被曝していない父親を有しているため、ダウンレイとラアーグ周辺小児白血病の症例の増加を説明することができていない(COMARE,2002)。COMAREはその第7レポート(2002)で、「我々は男性放射線業務従事者が被曝する線量における電離放射線のみが小児癌の発症の増加を導くとする説得力のある証拠を見出していない」と結論づけている。

4.7 癌以外の影響

63 現在のICRPリスク係数に組み込まれている低線量の癌以外の唯一の影響は遺伝子異常になる。しかしICRPの放射線防護体制は、閾値によって特徴づけられる一般的に認められた確定的影響(例えば眼のレンズにおける白内障)を考慮している。さらにこの体制は子宮内における照射によって誘発される影響(例えば肢体の不自由さや深刻な知的障害)を考慮に入れている。癌以外の影響に求められる線量の大半は比較的高いものになるが(しばしば1Gy以上)、Hall他(2004)による最近の論文は、100mSvまで下げられた線量により乳児において外部照射された後、成人になってから認知機能への悪影響を示す線量反応を示唆している。委員会は、もし感受性の高い細胞が十分に被曝されたならば、癌以外の影響は内部放射体からの放射線によって誘発される可能性があることを受け容れている。

64 委員会は、例えば心血管疾患、脳卒中、呼吸器、消化器系疾患といった特定の身体における癌以外の影響に対する線量反応における疫学的証拠を考慮している。この証拠は主に内部放射線よりむしろ例えば日本の原爆生存者といった外部放射線に対する被曝の研究(Preston他,2003)から導かれている。原爆生存者のデータに基づき、委員会は、子供の時における放射線に対する急性被曝に随い、生涯に亘った絶対的なリスクは1Svあたり約10%になるかもしれない、つまり固形癌の死亡率に対し大雑把に約半分の対応した値になるかもしれないと推定している。50歳で被曝した人々にとって、生涯に亘るリスクは癌以外と固形癌の死亡率に関し同様になるかもしれない(1Svあたり約3〜4%)(Preston他,2003)。これらの癌以外の影響のリスクが低線量において存在しているかどうかは放射線によるそれらの誘発の生物学的メカニズムに依存しており、それはまだ確定されたものではない。

4.9 今後の疫学的研究に関する勧告

76 一般の人々の多くのグループは、人工による放射線核種によって被曝されている。特に、大多数の人々が幅をもった被曝を経験しているため、FSUで被曝したグループは特別な関心の対象になる。チェルノブイリのフォールアウトにより被曝した人々、特に子供のときにひどく被曝した人々は治療はもとより(訳注、この「治療」に関する文言は本文中には記載されていない)研究の対象であることが望まれている。他の特定の例はカザフスタンのセミパラチンスク核実験場からのフォールアウトを被った地域における住民とテチャ川近隣地域の住民である。テチャ川は1940年代後半から1950年代前半においてマヤーク施設から大量の放射性廃棄物を投棄されており、地元住民に対し高い被曝を被らせている。委員会はこれらのグループを研究する努力を継続することを支持している。

付録4A
チェルノブイリ後の疫学

ヨーロッパやアメリカ大陸

(2) ギリシャで行われた研究において、Petridou他(1996)は、1986年4月のチェルノブイリ原子力発電所事故の結果として子宮内で放射線被曝した、1986年7月1日から1987年12月31日までの18ヶ月の期間に生まれた子供における小児白血病の割合を検証した。この被曝したコホートにおける発症率は1980〜1985年か1988〜1990年のどちらか一方において生まれた被曝していないコホートにおける発症率と比較されている。続いて西ドイツ(Steiner他,1998)、ベラルーシ(Ivanov他,1998)、アメリカの一部(Mangano,1997)において行われた研究は同様の方法でデータを分析している。これらの研究からの結果は表4A.1に纏められている。

(3) 小児白血病に対する上記の結果と対照的に、ギリシャ、西ドイツ、ベラルーシで行われた出生コホート研究は1〜3歳もしくは1〜4歳の幼児における白血病のリスクの上昇を示していない。表4A.2を参照せよ。

付録4B
核実験フォールアウトの疫学

アメリカ

(7) Archer(1987)は、アメリカにおける小児白血病の死亡率は大気核実験後数年間増加し、その後急速に減少したことを報告している。その後の治療の改善がこの疾患に対する治癒率における上昇を導いていることが指摘されるべきである。図4B.2で示されるように、コネチカット州(Heston他,1986,コネチカット癌登録,2001,Polednak,2001,2003)やカナダにあるサスカチュワン州(Wang and Haines,1995)における長期に亘る癌の記載は、Archerによって報告される死亡率のデータと同じタイプの1970年代の白血病発症率における減少を示していない。しかしそれらがさらに小さい人口と関連しているため、癌記載データはまばらである。またArcher(1987)は、アメリカの小児白血病の死亡率における州の違いは食料、牛乳、人間の骨に濃縮するSr90に基づく複合被曝指標と相関していることを指摘している。Sr90とCs137から4.05mGyという推定された子供に対する赤色骨髄線量とフォールアウトのピークの間5〜19歳の白血病の死亡率における9.5%の推定された増加に基づき、Archerは白血病の死亡率は1Gyと1年において10,000人あたり6.46人増加すると推定していた。この値は、日本の原爆データに基づいたBEIR V委員会により予測された値と類似していた(NRC,1990)。しかし、フォールアウト線量の過大推定により、おそらくSimon他(1995)によれば2という係数によって、Archerの値は過小推定されているかもしれない。

5 結論

内部放射体のリスクをテーマにした第2章から

5 ICRPは、経口摂取や吸入による放射性核種の摂取から生じると推定される放射線量における包括的な情報を与えている。ICRPは体内動態や線量測定モデルそして等価線量や実効線量と呼ばれる量を計算するために用いられる荷重係数の値を公表している。モデルが対象となる器官、組織、組織における部位に対する吸収線量(Gy)の推定値を与えるために用いられる一方、等価線量と実効線量は、RBE(wR)やトータルリスクもしくは癌や遺伝的影響からの被害に対する個々の組織の寄与(wT)を説明するために影響に関連した重み付けを導入している。個々の組織に対する等価線量の計算は、特定の癌(もしくは遺伝的影響)の全体のリスクを評価するために異なった放射線のタイプからの線量を合計する単純で都合のよい方法になると思われる。全ての全身もしくは実効線量を与えるために等価線量を重み付けし合計するさらなるステップは、全身被曝の限界と比較するために内部や外部といった全ての放射線被曝の合計を許容することにおいて都合がよいとされている。しかし実効線量のみの使用は、特定の組織の照射や線量移動の経時変化の双方において異なった放射線核種からの線量の移動における非常に異なったパターンを隠す可能性がある。実効線量は特定のタイプの癌のありうる発症率における情報を与えず、癌の誘発における全体的な確率のみを与えるものである(タイプの区別はない)。委員会は、ICRPが線量限界以下の線量において放射線防護の目的から実効線量の使用を留保することを勧告していることを強く強調することを指摘し、また感じるものである。特定の評価にとって、ICRPは吸収線量と関連した放射線及びリスク係数に対するRBEに関連した特定のデータを用いることが時として好ましくなるだろうことを勧告している。委員会は、線量が遡及的線量評価や疫学データの解釈のためかなりの割合の線量限界になり、またなるかもしれないとき、そのような特定の情報が適用されるべきであることを考慮している。委員会はさらに、ICRPの方法論の科学的基礎は問題にされ続けるべきであり、微量線量測定法や放射線生物学における展開がそれらの信頼性に対する判断を促すべきであることが重要であると結論づけている。

トリチウムをテーマにした付録2Bから

9 委員会は、放射線生物学やトリチウムのRBEが1以上になるといったRBEの実験からのかなりの証拠が存在していることを許容している。HTO被曝の全ての観察される影響を考慮すると、RBE値は1〜3.5のレンジに存在する。γ線にとって、ほとんどの値は1〜3になり、一方X線との比較において、ほとんどの値は1〜2になり、1〜1.5の値が優勢になる。トリチウムのβ照射に対しこれらの測定されたRBEは微量線量測定法的考慮に基づく推定値と合理的に一致している。一部の委員会のメンバーは、人間における癌の誘発に対するトリチウムのRBEの推定値に最も関連しているため、動物における発癌性の研究に言及している。マウスにおける乳腺腫瘍や急性骨髄性白血病の研究はX線と比較し約1といった値を示していた(Gragtams他,1984,Johnson他,1995)。メンバーは、トリチウムからのICRPの等価線量の計算におけるwRの使用に対するトリチウムのRBEのデータの含意において異なった見解を有していた。何人かは一般的な放射線防護の目的のために全ての低LET放射線に対し1という唯一のWR値をICRPが用いることを支持し、一方他はICRPが規程通りにトリチウムのβ放射に対し2以上のwRを適用するべきであると考えていた。

10 一部の委員会のメンバーは、RBEに追加される係数はトリチウムに対してはICRPモデルにおいて否定されており、現在の線量係数は約10倍ほど過小評価されているかもしれないと考えていた。ECRR(2003)レポートに貢献しているこれらのメンバーはトリチウムに対して10〜30のwR値を指摘していた(第2章のテキストを参照せよ)。他のメンバーはHTOに対するICRPの線量係数実質的に過小推定値になると結論づけ、OBTに対する値は、特定の物質に適用しないほうがよいかもしれないので、注意を払って用いられなければならないと指摘していた。

オージェ放射体をテーマにした付録2Cから

12 委員会のメンバーは、細胞の位置と組織における細胞の不均一分布に基づいたオージェ放射体からのリスクの増大の可能性は個々の放射線核種と関心となる化学形に対して検証されるべきであることに同意している。このことは、細胞核に有意に存在を示しているこれらの放射性核種/化学形に対する生物学的影響の研究とともに、分布に関する実験的な研究を含むだろう。ICRPはオージェ放射体に対するこれらの不確実性を認識しており、それらは特別なケースを示しており、特別な注意が払われ続けるべきであるだろうことを述べている(ICRP,2003)。

α放射体をテーマにした付録2Dから

14 委員会のメンバーは、体内における放射性粒子の振る舞いにおける利用可能なデータがそれらが容易に胎児に移動し、子宮内において白血病の高いリスクを呈する提案を支持しないことに同意している。しかしありうるリスクの程度は同意されていない。また気道のICRPモデルは一般的な循環に対し粒子のリンパ液上の動きを考慮しておらず欠陥が存在していると述べている。

生物学的証拠をテーマにした第3章から

16 セカンドイベント理論、激しい粒子の理論、2つのフェーズをもつ反応、人工と自然における放射線核種の比較において、2人のメンバーが、これらの理論は現在のICRPモデルが非常に不正確であり、2〜3ケタのオーダーの大きさ以上に放射線のリスクの真のレベルを過小評価する可能性があることを意味していると考えていた。委員会の約3分の1がこれらの理論とICRPのリスクがかなり不正確であることに同意しなかった。また他の3分の1は上記の理論に同意しなかったが、ある場合には異なる理由になるけれども、現在の放射線リスクがまだかなり過小評価されているかもしれないと考えていた。以下と第2章を参照せよ。

17 ほとんど半分のメンバーはこれらのメカニズムにおける生物学的証拠が現在のICRPのリスクモデルに十分に反映されていないとの見解を抱いていた。現在のリスクはそのため、少なくともある程度、そしておそらくいくつかの核種に対しはかなり、過小評価されている可能性があった。これらのメンバーはこれらの過小推定値はいくつかの疫学的結果を説明する可能性があり、特にCOMAREが観察される白血病の発症率がNRPBによって推定されるリスクより約200〜300倍大きい放射線のリスクを求めるものになるだろうとされるシースケールにおいてそうなるだろうと考えていた。これらのメンバーは、これらの生物学的メカニズムは別々に(加算的に)というよりむしろ、ともに(乗算的に)作用する可能性があり、リスクにおける観察される増加を説明するために求められるレベルまでリスクを増加させるだろうといったことを指摘していた。

20 放射線に誘発されるバイスタンダー効果や放射線に誘発されるゲノムの不安定性における新しい知見は低線量における健康上のリスクやそれらの定量的不確実性の考慮の中に含まれ続けるべきであるといった一般的な合意が存在していた。この点で、委員会は1990年に定式化された現在のICRPの勧告が第3章において議論されたかなりの生物学的情報に関し遅れていると認識していた。委員会は、特に微量線量測定法、誘発されたゲノムの不安定性、バイスタンダー効果、癌のメカニズム、生殖細胞系におけるミニサテライト変異に関し、継続する国内と国外の放射線生物学における研究プログラムを承認した。

6 勧告

1 委員会は、線量と内部放射体からのリスクを考慮するとき、ICRPは等価線量と実効線量の意図された使用とそれらの限界に対しもっと説明を与えるべきであると勧告する。ICRP(1991)は以下のように述べている。

「既知の人口における被曝のありうる結果に対する推定値にとって、吸収線量と関連する放射線の相対的生物学的影響と被曝人口に関する確率係数に関連している特定のデータを使用することがときとして好ましいとされるだろう。」

委員会のメンバーはこのアドバイスは精緻化されるべきであると考えていた。特に、内部放射体による被曝における特定の情報の使用は、線量が遡及的線量評価や疫学的データの解釈において限界や制約に達しているかもしれない状況で、必要になるだろうといったことが明らかにされるべきである。

4 放射線の生物学的影響における新しい知見は低線量における健康上のリスクやそれらの定量的不確実性を考慮の中に含められ続けるべきであるといった一般的な合意があった。この点で委員会は、1990年に定式化された現在のICRP勧告は第3章で議論されたかなりの生物学的情報に遅れていることを認識していた。委員会は、特に微量線量測定法、誘発されたゲノムの不安定性、バイスタンダー効果、癌のメカニズム、生殖細胞系のミニサテライト変異に関して、継続的な国内と国外の放射線生物学における研究プログラムを承認した。重要な側面は、低線量における影響に対する線形閾値なしの線量反応における仮定に対する信頼だった。

低線量被曝に関して二次もしくは超線形の関数によって説明することやホルミシス効果の存在を肯定していることはECRRと同様であり、線型モデルを採用しているBEIR VIIと異なっている。そして放射線防護の観点からホルミシス効果を取り入れるべきではないといったECRRの立場と類似しているように見受けられる場面があったが直接の言及はなかったように記憶している。生物学的、医学的説明に関して比較的易しい事例が採用されるケースが多く、その点でECRR、BEIR VIIと異なっている。

いずれにせよ低線量被曝における影響は疫学上の観点から、線量、線量率、被曝時の年齢、被曝された組織、影響の種類によって異なるモデルを採用する必要があり、全てをLNTで説明するには無理があるといった立場に立っていることが、ICRPの勧告から類推される背景と異なる点であろうか。そしてECRRも同様の観点から、類似した議論を展開していた。

1つの電子が細胞を通過する線量を1mSvで説明するならば、物理的には10個の電子が細胞を通過する線量を10mSvで説明することが可能になろうが、吸収線量つまりmGyやGyによってその影響は異なるのだが、生物学的には非常に大雑把に言えばDNAにおける傷がどのような分布で存在するのかと細胞の自己修復のメカニズムとの関係の中でその影響が説明されることになり、疫学的にその影響をデータで補足するといった学際的な研究がこの分野においてなされている現状がある。

疫学的データを考慮していることに変わりはないが、ICRPやBEIR VIIはモデルドリブンの傾向があり、ECRRやこのレポートはデータドリブンの傾向があると把握する視点があろうかと考えることがあるが、いずれにおいてもモデルとデータの双方が検討されていることに大きな違いはない。

結論として空間線量を低くする努力が求められていることに変わりはないが、長期に亘る低線量の被曝をモニタリングする立場にとどまるならば、疫学的研究、調査の立場から一歩踏み込んで、被災地の方々を疫学的研究、調査の被験者における立場にさせることを避けるために被曝線量を減らす努力が求められると考えることがあり、同時にこれまでの知見を詳細に検討する必要があるだろう。

以上のような見解をフランス科学アカデミーとフランス国立医科大学によるレポートを理解する中で考えることがあったが、レポート自体はフランス語で記されている訳ではなく平易な英語による記述になり、同時にこれまでの論拠のサポートとして、レポートの一部を訳すことを試みてみたい。URLと訳は以下に示される。
http://citeseerx.ist.psu.edu/viewdoc/download?doi=10.1.1.126.1681&rep=rep1&type=pdf

フランス科学アカデミーとフランス国立医科大学

線量と影響の関係および低線量の電離放射線の発癌性に対する影響の推定

2005年3月30日

専門家向け概要

疫学的研究は100mSvより低い線量の潜在的な発癌性へのリスクを決定するために行われてきており、それらは大規模な群や集団においてさえ統計的に有意なリスクを検出することができていない。したがって信頼区間の一番高い限界が相対的に低いことから、これらのリスクは悪く見積もっても低いものになる。一般的に発癌性へのリスクとされているものは統計的に推定されるものであり、症例管理における研究や集団の追跡調査を通じそのような線量を確立することはあまり現実的ではない。数十万の被験者にとってさえ、そのような疫学的研究の説明する力は、非照射群においてすでにかなり高くライフスタイルによって変動する自然癌の発生に加えて、癌の発生や致死率における非常に小さな増分の存在を示すには十分なものにはならないだろう。高い自然照射や低い自然照射が存在し、そして類似した生活状況を抱えている地球上の地域の間における比較のみが、このレンジの線量や線量率に対し有益な情報を提供することができるだろう。ケララ(インド)や中国で進行中の研究における結果は注意深く分析される必要がある。

これらの疫学的限界のため、低線量(<100mSv)のありうるリスクを推定するための唯一の方法は0.2Sv〜3Svの間で観察される発癌性に対する影響からの外挿になる。

LNTモデルは、線量と検証されうるこの線量のレンジにおける発癌性に対する影響の間の関係をよく説明している。しかし、外挿により低線量および非常に低い線量のリスクを評価するためにこの関係を使用することは細心の注意を要する。最新の放射線生物学のデータは、数十mSvより低い線量のレンジにおいてLNTに基づき推定することに対する妥当性をそこない、それはLNTが暗黙の基礎としている仮定に対する問題に繋がり、1)線量および線量率がなんであれ単位線量あたりの突然変異の確率における安定性の問題、2)隣接する細胞や組織に存在する傷の数がなんであれ細胞の発生が同様に展開した後の発癌プロセスにおける独立性の問題が挙げられる。

実際、1)数mSv(<10mSv)の線量において傷は細胞の消失により除去され、多数の細胞を傷つけるわずかにより高い線量(そのため組織に傷を与えることがある)においては修復システムが促進される。それらは細胞を助けるかもしれないが、間違った修復や修復できない傷を生じさせるかもしれない。低線量(<100mSv)において、変異した遺伝子の修復の程度は小さくなるが、単位線量あたりの相対的重要性は線量や線量率とともに増大する。修復の期間は損傷とその量の複雑性にともない変化する。幾つかの酵素におけるシステムも含まれ、DNA損傷の高い局所的密度はそれらの有効性を低下させるかもしれない。低線量率において間違った修復の確率はさらに小さくなる。線量、線量率、傷のタイプや数、細胞の生理学的状態、そして影響を受けた細胞の数による細胞の防御メカニズムにおける変化は、観察される線量や線量率に依存している放射線感受性における大きな変化(細胞死亡率や単位線量あたりの突然変異の確率における変化)を説明する。細胞の防御メカニズムにおける変化は同様にいくつかの現象によって示され、照射中における当初の細胞の過剰な過敏さ、非常に高い線量率における短く強烈な照射の後における放射線感受性の急速な変化、当初事前に準備された放射線による低線量に随い数時間もしくは数日間における細胞の放射線感受性の減少の原因となる適応性における反応等が挙げられる。

2)またランダムにいくつかのターゲット(原癌遺伝子、抑制遺伝子など)に影響するゲノムの傷によって放射線発癌現象が発生されると想定される。LNTの使用における理論的なフレームワークを与える比較的単純なモデルは、遺伝的なもしくは後成的な傷を含むさらに複雑なモデルによって置き換えられ、その中において発生した細胞とそれらのミクロな環境の間の関係が必要な役割を果たすことになる。発癌プロセスは細胞、組織、そして器官における有効な防御メカニズムによって相殺される。組織について、傷を受けた後、胚発生や直接の細胞修復を支配するメカニズムは細胞増殖のコントロールに重要な役割を果たすように思われる。このことは特に、形質転換細胞が正常な細胞に囲まれているときに重要である。これらのメカニズムは、少量のα線放射性核種により影響を及ぼされた人間や実験における動物の発癌性への影響がないこと同様、異種の照射、例えばグリッドを通じた局所的な照射における有効性の低下を説明することができる。後者のデータは閾値の存在を示している。多数の細胞の死が組織を壊し、組織から発生した細胞の流出のコントロールを促すので、細胞間の相互作用は同様に組織と線量に随った発癌性の確率における違いを説明するのに役立つことがある。

3)腫瘍細胞を移動させることにより示されるように、免疫監視システムは形質転換細胞のクローンを除去することができる。免疫監視の妥当性は、免疫抑制の対象の間のいくつかのタイプの癌の発生の大幅な増加によって示される(関連の理由はDNA修復(NHEJ)と免疫不全における欠陥の間に存在しているように思われる)。すべてのこれらのデータは、低線量のさらに低下した有効性や、細胞のシグナル伝達とその後のDNA修復メカニズムを十分に有効にする非常に低い線量の機能低下や細胞死に関する間違いない修復と免疫監視の間の関連のいずれか一方に関して、実用的な閾値の存在が示唆される。しかし現在の知識に基づくと、閾値(5〜50mSv)を定義することやそのための事実を与えることは不可能である。特に細胞防御のメカニズムに対する刺激は活性酸素の種に対応する。実際、実験における動物データのメタ分析は、これらの研究の40%において、低線量被曝後、動物における任意の癌の発生について減少がみられるということを示唆している。今まで現象を説明することが難しかったため、この観察は見逃されてきた。これらのデータは、同じ線量の増加に対し生物学的有効性が全ての線量と線量率の関数として変化するので0.2〜5Svの線量のためになされた低線量の発癌リスクの観察を評価するための線形閾値なしの仮定を用いることは正当化されないということを示している。このレポートの結論は実際以下の議論によるLNTの使用を正当化する他の著者[43,118]の結論と矛盾している。

1. 10mGyより低い線量において、DNAや細胞に関し電子の軌跡に沿って発生した異なる物理現象の間の相互作用はない。

2. 原因となる傷と間違いがあるケースやないケースの可能性の性質そして細胞死による損傷した細胞の除去は線量や線量率により影響を受けない。

3. 癌は分裂しがちな細胞におけるDNAの傷の直接的なそしてランダムな結果であり、癌を増加させる発生した細胞の確率は隣接した細胞や組織における損傷により影響されることはない。

4. LNTモデルは広島と長崎の集団における固形腫瘍を誘発する線量と影響の関係に当てはまる。

5. 10mGyのオーダーの線量の発癌性への影響は子宮内の照射研究からの結果により人間のために示されている。1番目の議論は線量に比例する初めの物理化学的結果に関連している。しかし細胞の活性化された防御反応に対する性質と妥当性は線量と線量率に伴って変化している。2番目の議論はこのレポートで考慮されている放射線生物学上の研究によって否定されている。3番目の議論は発癌プロセスの複雑性と細胞間の関係や基質に対する特別な役割における最近の知見を考慮していない。4番目の議論に関し、LNTに加えて、他のタイプの線量と影響の関係は原爆生存者における固形腫瘍に関するデータとも適合し、十分にLNTの概念と適合しない疫学的データ、特にこれらの原爆生存者における白血病の発生とも適合しうる。さらに入手可能な最新のデータを考慮すると、広島と長崎の生存者における固形腫瘍における線量と影響の関係は0〜2Svの間において線形でなく、曲線になる。また、たとえ線量と影響の関係が例えば50mSv〜3Svの間における固形腫瘍に対し線形であると示されていても、線量と影響の関係が腫瘍のタイプや被爆時の個人の年齢によりかなり変化することを示している実験上のそして臨床上のデータを理由にすると一般化は不可能であろう。固形腫瘍に対し観察される大きなそして経験上の関係は、癌のタイプによって、例えば線形か二次式か、閾値をもつかもたないかなど、かなり異なる可能性があるすべての関係と一致している。

結論として、このレポートは低線量(<100mSv)そしてさらに非常に低い線量(<10mSv)の発癌リスクを評価するためにLNTを用いることの妥当性に対し問題を提起している。LNTの概念は10mSv以上の線量に対する放射線防護におけるルールを評価することに対し実用的なツールになりうる。しかし我々の現在の知識における生物学上の概念に基づいていないので、外挿によって低線量やさらに低い線量(<10mSv)に関連するリスクを評価すること、特に欧州指令97-43によって放射線科医に課されるリスク便益評価にとって特別な注意なしに用いられるべきではない。生物学的メカニズムは数十mSvより低い線量やそれより高い線量に対し異なっている。放射線検査(0.1〜5mSv、いくつかの検査では20mSvまで)の線量のレンジにおける最終的なリスクは放射線生物学上のそして実験上のデータを考慮に入れ推定されなければならない。200mSv以上の線量で検証されている経験上の関係はリスク(100倍以上低い線量に関連づけられた)の過剰評価に結びつくかもしれない、そしてこの患者が役に立つ検査を受けることを思いとどまらせる可能性があり、非常に低い線量(<10mSv)に対する放射線防護の手段におけるバイアスを誘発する可能性があるかもいしれない。

用語集

低線量。低線量や非常に低い線量とされる線量についてコンセンサスはない。著者によっては、低線量は200mSv以下もしくは100mSv以下になるかもしれず、非常に低い線量は20mSvもしくは10mSv以下になるかもしれない。このレポートの文脈では、我々は低線量を100mSv以下、そして非常に低い線量を10mSv以下にする。

1 イントロダクション

1.1 低線量の電離放射線によるリスクは直接評価されることができない。そのためそれらを評価する唯一の方法は高線量の影響から外挿することによる。この外挿に対し用いられる線量と影響の関係に応じて、低線量によるリスクはゼロ(もしくはホルミシス効果により負の値でさえあるかもしれない)から線量に比例した値(もしくは超線形でさえあるかもしれない)までのレンジになるかもしれない。低線量における発癌性のリスクの評価は、3つの例によって示されるように、医学において非常に重要である。

1.3 低線量の影響は通常、線形で閾値がない線量と影響の関係(LNT)を用いた外挿により推定される。低線量の発癌性のリスクを評価するこの方法は国際放射線防護委員会(データの収集と解釈を単純化するためのICRP[117])により1960年代に導入されている。LNTにおける関係は、作業期間中、線量率、被曝、放射線の種類に関係なく作業者が被曝する様々な線量を追加することができる。妥当なことだが、このことは、意思決定するために外挿によって低線量の影響を推定する実用的な目的のためにLNTの使用を促すものである[133]。線量が常に蓄積し、それらがどれ程低かろうとも、細胞やその核を横切る各々直接的にまたは間接的に電離した粒子は独立にふるまい、同じ影響を有するので、それらの線量は単位線量あたり同じ発癌性の可能性を有しているといったことを仮定することによって、この使用は後に正当化されている。この仮定は、1970年代にDNAの損傷と発癌性の間の関係が確立されたとき支持され、発癌性が確率的メカニズムによって引き起こされることが認められた。このことは、全ての照射でありながら低い線量が発癌性を導く修復不能なDNAの損傷を引き起こす可能性があり、LNTモデルが最も低い測定可能な線量であっても妥当であると想定することを論理的にした。LNTはそれゆえ、非常に低い線量のリスクを推定することに対する妥当性におけるあらゆる詳細な議論なしに、科学的なモデルの地位を獲得した[133]。

特にゲノムを保護するメカニズム(本質的にはDNA修復[10,15,56,192,251,298,302]を含めている)の存在やDNAが死により損傷された細胞を除去することにおける最近の証拠に照らして、この妥当性は現在問題にされている[1,84,272,273]。実際は、仮に単位線量あたりの影響が線量や線量率に関係なく一定であるならば、これらの防御メカニズムはLNTの妥当性を問題とするのに十分ではないだろう。しかし、このように一定であることを想定することは間違っているといったことが現在明らかになっている。我々は修復の影響は低線量率においてさらに大きいといったことを認めてるが、最近の研究[60,73,241]は、これらの違いを示すことにより、高い線量から低い線量への外挿に対するあらゆる科学的正当化を退けた。このレポートの目的はそのため学際的なデータ(生物学的な、生物物理学的な、疫学的な)を更新することになり、それによりさらに明らかに低線量と高線量の間における定量的、定性的違いやそれらの発癌性への影響を定めることが可能になる。

1.4 哺乳類の細胞における線量率に随った単位線量あたりの遺伝毒性の影響の確率における変動を考慮に入れるため、調整がICRPにより導入され、それは暗黙にLNTが臨床的、生物学的データを無視していることを認めている。線量、線量率、影響への要因(DDREF)はそのため低線量率における低線量の光子に対する被曝から生じる影響を示すために導入された。リスクを評価することに責任があるUNSCEAR、またはICRP委員会1のいずれかにおいて、この考え方の妥当性についてのコンセンサスはなかった。UNSCEARは、実験データを考慮に入れるため2から10までのDDREFのレンジを示唆した[281,282]。やや独断的にそして保守的に、ICRP[117]は2というDDREFを採用し、この選択の妥当性は問題とされた[118]。

1.6 我々は後に、放射線発癌現象、電離放射線による細胞、組織、器官の被曝により生じる物理学的、生物学的現象、放射線発癌現象における実験データや、疫学的データを検証しなければならない。これらのトピックは付録においてさらに詳細に説明される。最後に、データに照らして、我々はLNTの関係の妥当性を議論し、これらの議論の実用上の含意を考察しなければならない。

3 電離放射線により生じる物理学的、生物学的現象

3.4 線量と照射の時期に依存する突然変異と致死率の変化

等しい線量では、突然変異の影響は線量率に伴って著しく変動している[160,241,289,290]。線量率が増加すると、最低量を過ぎた後(ホルミシス)の突然変異の頻度は大幅に増加する[289]。もし同時に存在する傷の数が小さいならば、修復は一般的にさらに効果的になり、これからそれは高線量率より低線量率でさらに効果的になる。限られた数の傷は修復を高める細胞周期の進行を可逆的に止めることを誘発している。多量の傷は細胞死を導きうる細胞周期の停止を先へと追いやる[82,205]。修復にかかる時間は傷と修復が作用するシステムの複雑性に依存している。傷の高い局所的密度は修復の効率性をそこなうものである[303]。

3.4.6 概略として、4つの線量のレンジの間で区別されることができる。

- 約100mGy以下の線量や低線量率における線量において、損傷された細胞は除去され、可能であるときはいつでも、高い信頼性をもったメカニズムによって修復される。この除去/修復メカニズムが照射によって誘発されるとき、それはまた酸化による代謝により損傷された細胞上に作用する。酸化によるストレスにより誘発される解毒メカニズムと組み合わされ、これらの防御メカニズムは同様に実験上の動物において観察されるホルミシス効果を説明することができる[11,25,50,79,84,87,174,233,244]。しかし低LET放射線によって誘発される細胞の損傷は細胞代謝によって誘発される損傷とは異なり、それは、ⅰ)二重の鎖が損傷するさらに高い比率によるものと、ⅱ)纏まった傷(水酸基により損傷を受ける)の存在によるものと、ⅲ)細胞レベルにおける影響のさらなる不均一分布(区画されていない)によるものが考えられる。

ホルミシス効果を説明しうる他のメカニズムは試験管における実験において例証され、細胞の選択的死は悪性の形質転換を受けやすかった。これは関連した線量であると思われる[235,236]。

3.5 隣接する細胞、傍観者(標的部位から離れた所の)効果と、遺伝的不安定性の役割

これらの研究によって示されるように、癌細胞は遺伝的不安定性を含むかもしれない[Fouladi 2000] 。理論的には、不安定性は親の生殖細胞を通じて子供に伝わるかもしれない。そのことは被曝した親の子供における癌の増加を導くだろう。しかし、このことは人間では観察されておらず、これゆえ除外されることができるだろう[123]。

3.6 このレポートの主題は電離放射線である。しかし、その結論の大半が他の物理的(紫外線)や化学的(遺伝毒性)発癌媒体に同様に適用されることができ、そのためしばしば、管理上の理由で同様に、LNTの関係を適用する傾向がある。この傾向を問題とする時代が来ていると思われるが、その科学的基礎には問題があり[1,6]、それは不当な恐怖心や犠牲を引き起こす可能性がある。問題は物理的媒介以上に化学的媒介にとってさらに複雑であり、その理由として研究成果の2つの側面が考慮されなければならず、それは遺伝毒性と解毒作用を含むかもしれない代謝になる。

あらゆる毒性作用は多数の生化学的反応の結果である。X線と同様に、いくつかの媒介は高反応性化学物質(遊離基、影響力のある求電子試薬、酸素の反応性物質)の生成物の結果として直接的に、間接的にDNAの傷を誘発することによる遺伝毒性になり、一方他は防御反応を誘発する。それぞれの毒性作用にとっては、特定の防御メカニズムがある。例えば、金属チオネインが重金属をとらえる方法と同様に、グルタチオンが遊離基や求電子試薬をとらえる一方、スーパーオキサイドディスムターゼがスーパーオキシドアニオンを分解することがある。結果はこれらの2つのタイプの反応の間のバランスに依存している。もし線量が低く、防御が十分ならば、有害な影響はないだろう。もし線量が高く、防御反応がpHを超えるときの緩衝剤のように押さえ込まれるなら、有害な影響が生じ、それは線量に比例するだろう。

閾値やホルミシス効果さえ存在する可能性があるが、ここ10年における多くの議論は、これが化学的媒介におけるケースであることを示唆してきた[125,148, 238]。実際には、閾値における結果の分布はランダムではなく(もし存在するなら、正と負の効果の同じ頻度が存在するだろう)、負の効果はさらに頻繁に生じ、それはホルミシスの仮説を肯定している[49]。このことは近似の中に観察される。
毒性研究[50]の40%、つまりそれに類似した比率が実験における放射線発癌現象に関したDuportのメタ分析[79]の中に観察される。

4 実験における動物のデータ

対照動物において発癌性が十分に高いことを示す実験的な研究の中で、この発癌性の減少はそれらの動物の40%において低線量の照射に随い観察され、その観察はホルミシスの考え方と一致している。この知見はこの考え方の一般化を正当化しないが[286]、その存在を確認している[79,174,244]。

5 疫学的データ

5.2 低線量の分野では、利用できるデータは3つのグループに分類されることができ、被爆の間低いレベルの放射線を被爆した原爆生存者(高線量率)、住環境や労働環境において得られたデータ(低線量率の照射)、診断や治療の手続きの後得られたデータ(高線量率で細分化された照射)になる。

5.2.1 広島と長崎の原爆(HN)の生存者における発癌性の分析において、白血病と固形癌は区別されていた。放射線に誘発された白血病に関して、線量と影響の関係は統計的にLNTの関係と両立せず、近似において閾値の存在を示している。そして150mSvや100mSvより低い線量において自然に生じるリスクの低下(ホルミシス)がある[155,156]。固形腫瘍に対して線量と影響の関係についてかなりの議論があった。最近の分析は、線量と影響の関係は線形でなく曲線であり、おそらくパラメータにとってかなり類似した値をもつ線形二次であるかもしれない[224]。この新しいデータはさらに長い追跡調査と2002年における薬量測定の修正から便益を受けた[132]。低線量ではSvあたりの固形癌による死の過度なリスク(ERR/Sv)は現在0.19(95%CI: 0.03-0.37)[224]であり、以前の推定の半分以下であると推定されている[223]。Preston達は、最低線量における過度の相対リスクの分布における例外を支持することによって、リスクを評価することに対するこの関係の範囲を制限しているが、この理由付けを受け容れることは難しいことであり、その理由として、非常に低い線量において中性子のRBEが10や約30、それ以上よりかなり大きい値をもつことが挙げられる[291]。このような高いRBEは、現在これらの問題となっている非常に低い線量のレンジにおける高い過度の相対的なリスク(ERR)のいくつかを修正することを促すだろう。曲線の最初の部分の線形性(線形二次の関係の線形部分)は再考されるべきであり、低線量のレンジを超える低LET照射の固形腫瘍に対する影響は再評価されるべきである。

発生率のデータはまだ修正されておらず、ERRは5〜50、50〜150、50〜500、50〜4000mSvのレンジにおいて類似していると思われ、線量と影響の関係はLNTモデルと一致するが、同様に60mSvまでになりうる閾値や2次の関係をもつモデルとも一致している[213]。中性子に対するRBEの補正は光子の影響に対する閾値の存在を肯定する仮説を補強するはずである。爆撃の間被害を被った負傷者の癌のリスクにおける起こりうる影響が同様に報告されている[260]。

5.2.3 数十mSvの放射線に対し職業的に被曝した数百や数千の人々を含む疫学上の研究は100mSv以下の線量に対する統計的に有意なリスクを発見し除外するのに十分なほど役に立つものではないので、異なった自然レベルの放射線によって被曝された人間集団の比較のみが非常に低い線量率で管理された低線量(<20mSv/年)の影響についての量的情報を与えることができると考えられるが、それらの比較は十分に大きな集団において行わなければならない。現在、自然放射線が明らかにフランスより高い地域で行われる研究は自然放射のレベルと癌死亡率との相関はないと示されている一方、循環しているリンパ球における染色体異常は高いレベルの照射を裏付けており[268]、インドのケララ州(最大70mSv/年[194])、中国の地域で陽江市(10年間地域の住民100,000人をかなりモニタリングしており、6、4、2mSv/年[262,264,293,294])、日本(ラドンによる照射[169,202,256])が挙げられる。すべてのケースにおいて線量率は非常に低い。研究はこれらの当初の知見、それらの更新が興味深い情報をもたらすはずであるといったことを確認することが現在進行中である。医療診断における照射(高い線量率)のフレームワークの中で、医療記録や他の信頼できる線量に基づいた被曝からの類推を含む研究は、100mSvより低い線量において例え繰り返されても放射線検査後の白血病のリスクにおける増加を示していない[32,35,67,258]。過度のリスクを示す唯一の研究は検証できないケーススタディに基づいており、証人のインタビューによるため、バイアスが含まれている可能性がある[228]。甲状腺癌に関して、それらが子供や大人における頻繁な放射線検査によって生じる可能性があると示しているデータは存在しない[90.120]。3つの集団における研究は、100mSv以上からの線形の線量と影響の関係により放射線診断検査を繰り返した後、乳癌のリスクにおける増加を示し、相対的なリスクは被曝時の年齢によって明らかに減少していることが示されている[32,77,109,114,170,222]。これらの研究は100mSv以下においてリスクの増加を示さなかった。100mSv以下、特に50〜100mSvの間の線量におけるメタ分析は非常に役に立つものであり、付録4はこの分析がなされていることを示している。この文脈において、10mGyのオーダーの小分けにされた線量は乳癌のリスクにおける増加に影響を及ぼすけれども、1Gyのオーダーの累積的な線量にとって(胸部はこのことが示される唯一の器官である)、10mGyの単一の線量が、ICRPの最近のレポート案[118]で示されたように発癌性があると結論づけることは正当化されないと思われるといったことを指摘することは重要である。実際には、気胸のために追跡された女性の研究は500mGy以上の線量にとってのみ有益であり、この線量以下では、過度のリスクは実質的に0であり、9%と言うこともできるが、有意ではない。結核を患っていたこれらの女性は特に最初の妊娠における年齢と子供の数に関して一般的なカナダの人口集団と同じ他の乳癌のリスク要因をもっていることを確認することは同様に興味深くなるだろう。

放射線療法では、線量はさらにかなり高く、高い線量率で管理されている。対象となる部位に位置していない組織は数mGyから数Gyに至るまでのレンジの線量を被曝している。このリスクは数千から数十万人に至る患者を含むいくつかの研究で評価され、それは線量と放射された対象の年齢によってかなり変化する。例えば、癌のリスクの増大は子宮頸癌を治癒し放射線治療を受けた160,000人の女性に見受けられたが、50mGy以下の線量を被曝した組織における発癌性への影響はなかった[34]。同じ線量を被曝した子供において、誘発された癌の超過はさらに大きくなり、誘発された癌のタイプは異なっている。

ヨウ素131を用いる代謝における放射線療法は外部放射線療法よりかなり低い線量率になる。ヨウ素131による線量の管理は大人(甲状腺機能亢進症[110]のために治療を受けた10,000人の患者とシンチグラフィー[72]を受けた36,800人の被験者)において甲状腺癌のリスクを増大させなかった。子供において影響は観察されなかったが研究された子供の数は限られており(20才以下が1900人になり、18人以下が800人になる[99])、彼らの平均年齢はチェルノブイリによって甲状腺癌を患った旧ソ連の子供の年齢よりも高かった。チェルノブイリの後観察された甲状腺癌を患った2000人の関して、80%の患者が事故の当時5才以下だった。一般的にヨウ素が欠乏していたこれらの子供は、高線量率を招いていたヨウ素131やさらに短い半減期(特にヨウ素132)をもつヨウ素に被曝していた。チェルノブイリの結果として被曝した甲状腺をもつ2百万人に子供の間においていくらかは1Gyより高い線量を被曝していたことに注意してほしい。甲状腺癌の超過は旧ソ連の外ではポーランドでさえ観察されなかった。研究はIARCによって、ロシアやベラルーシにおける甲状腺癌を患った子供が被曝した線量の評価において行われてきた。

5.3 子宮における医学照射は"Oxford Study"[75]として知られている大規模な集団の研究の対象になってきた。この研究は癌のリスクが約10mSvの線量で増加すると結論づけた。厳密に行われているが、この研究は弱点がない訳ではなく、いくつかの他のデータと一致していなかった。

5.3.1 広島と長崎において子宮内で被曝し、1992年までモニタリングされた807人の子供において、超過した相対的なリスクの上限は1mGyに対して0.6%[68]になり、それはOxford Studyにおいて得られる値[30]の十分の一であった(5.1%、信頼区間は2.8〜7.6になる)。また、一方でOxford Studyが、他方でMonsonとMcMahonによる研究[185]が、広島、長崎の研究がさらに長い追跡を行ったことに比べて、10才より以前に亡くなった子供に関しいかなるリスクの増加も見出さなかった。子宮内における照射の後様々なタイプの白血病の発生における増加はスウェーデンの研究(再掲198)において見られなかった。これらの研究における非常に限られた数のケースはリスクに値を与えることを困難にしており、何人かの著者[33,208,269]は、Oxford Studyに対する肯定的な見方はバイアスを伴った記憶に関連づけられているかもしれず、照射自体というよりはむしろ妊娠中にX線を求めた母体疾患によるものかもしれないという感じを受けている。

したがって子宮内における照射の発癌性への影響におけるデータは、子供や大人における低線量のリスクを評価するための基礎になる十分な堅牢性をもっていないと思われる。

5.4 全体として、子宮内の照射の結果において例外を伴うこともあるが、正確に行われた疫学的な集団の研究や症例対照研究は、大人の100mSvにおける近似より低い電離放射線の線量に対するいかなる発癌性への影響も見受けられなかった。いくつかのこれらの調査は大規模な集団を研究しており、その規模は広島と長崎の生存者の人口よりかなり大きいものになる。いくつかの情報のソースは欠点を抱えており、その例として放射線科医に対する個々の線量測定の除外(それは研究の説得力を減少させる)が挙げられるが、他はそうではない。これらの研究のいくつかにおいて、線量測定は高い質を伴い、広島と長崎の生存者に対する仮定よりもほとんど少ない数の信頼できない仮定に基づいている。それゆえ疫学的データは200mSvより低い線量におけるLNTの関係を肯定する説得力のある議論を与えていないものの、それらはこの線量のレンジにおける発癌性の影響が存在する可能性を除外していない。利用できるデータと最も密接に一致する関係に対する研究は継続されるべきである。しかし、線量と影響の関係はおそらく顕著に、組織、照射時における年齢、そしてとりわけ線量率とともに変化することを強調されるべきである。唯一のタイプの関係が存在するといった仮定に対する科学的正当性は存在しない。

5.5 長い半減期をもつα線放射性核種による発癌性

現在の知識に基づくと、これらの仮説の間において選択を行うことは困難であるが、これらのデータによると、このタイプの照射において、損傷した細胞の数が少ないとき傍観者効果と放射線によって誘発されるゲノムの不安定性は癌の原因とならないことが示される。またこれらの仮説はLNTの関係が基礎としている条件と一致していない。

6 LNTの関係の妥当性

1956年にRussellによってマウスの生殖細胞系において放射線によって誘発された突然変異を評価するために用いられたLNTモデルは、1960〜1980年の間に人間における全ての変異原性と発癌性に関して放射線防護の規制の目的のために導入された。当時、これは便利な実用的な関係だったが、データに基づいたモデルではなかった[133]。その後人々が発癌性の複雑性や照射に対する細胞の反応の多様性や有効性に気付いていなかった当時、予測値はこの線形性により求められていた。ここ10年間における急速な知識の展開は、低線量(<100mSv)やさらに非常に低い線量(<10mSv)における発癌性への影響を0.2〜3Svの線量のレンジにおいて観察される影響を基礎にして評価するためにLNTの使用が基礎にしている仮説の妥当性を再考することを我々に促すべきである。

6.1 LNTモデルは細胞が線量率や線量にかかわらず同じように反応すると仮定しており、それは死と突然変異の確率(単位線量あたり)そして各々の物理現象の発癌現象に対する影響は細胞や隣接する細胞における傷と関係なく一定のままであると示唆している。この一定である性質は暗黙にいくつかの仮定を認めている。

1. 考慮されている線量や線量率のレンジにおいて細胞における電離放射線の様々な軌跡により引き起こされる影響の間の物理的、化学的、生物的相互作用は存在しない。

2. 細胞の核におけるエネルギーのあらゆる吸収された線量は突然変異に関し比例する確率を示している。正しい修復や間違った修復(単位線量あたり)の確率は常に同じになる。同様に細胞死の確率は線量とともに変化しない。

3. あらゆる傷は癌を生じさせる同じ確率を有し、同じ細胞や隣接する細胞における他の傷の数に関係しない。

6.2 これらの仮定は暫定的に以下のように纏められた現在の放射線生物学の知識と一致しない(§3を参照せよ):

6.2.2 線量率はDNA修復と突然変異の効果に影響している(§3を参照せよ)。シグナル系は5mGy/分以下の線量率では活動せず、細胞死は5mGy以上の線量によって引き起こされ、修復システム(そしてそのための誤った修復の確率)は約10mSvから引き起こされる。

6.2.5 未修復のDNAの傷をもつ大半の細胞は、これらの傷が修復されないときの死によってか、細胞死を引き起こすことによってかのいずれか一方によって除去される。試験管内で損傷を受けた細胞は非常に低い線量で消滅するが、これは10mSv以上の線量のケースではない(§3.3.4 と 3.4.6を参照せよ)。潜在的な変異細胞における除去の効果は線量、細胞系、組織とともに変化する(206、§3.4.5を参照せよ)。Hendryの研究では[104,105]、γ放射の後腸腺窩細胞の細胞死に関して、細胞死は200〜400mGyの線量において安定期に達する。Rothkammの実験[241]は、低線量の照射の24時間後、DSBをもつ細胞が検出されなかったことを示しており、これは、修復が行われないことによる細胞の死か、間違いのない修復と細胞死の組合せかいずれか一方によるものでありうる。線量や線量率が低ければ低いほど[60]、傷はさらに効率的に除去される(§3.4.5を参照せよ)。

6.2.7 実証の試みにもかかわらず、染色体異常の超過は低LET照射による20mSv以下の線量に対し報告されなかった。したがってこの効果に対し閾値が存在するかもしれない。染色体異常による線量と影響の関係における一般的に許容される形式は線形二次になる。このことは長期に亘る照射による線量を信頼できるように決定することを可能にし、事故後の線量に対し再考させるものになる。しかし、線形二次の関係は小さなレベルの異常を予想しているが、低い線量および線量率において効果は20mSv以下において検出されず、それは、線形部分の最初の傾きが100mSv以上の線量から計算される傾きより緩やかなことからか、現実的な閾値(§3.2を参照せよ)に加えおそらくホルミシス効果さえ存在することからかのいずれか一方になる。これは重要な問題になり、染色体転座や染色体欠失が発癌現象において基本的な役割を果たしているからになる。同じ染色体や隣接する染色体における2つ以上のDNAの二重鎖の損傷があるとき染色体異常の発生が観察され、断片の再結合はその初期状態に分子を復元させないか(同じ染色体における反転や転移があるため)、同じ染色体に属しない断片を再結合させることさえあるため、低線量の低LET放射線による染色体異常のためLNTの関係の妥当性が失われてしまうことは驚くべきことではない[62]。したがってこのような間違うことがある結合の確率は限られた量において同時に存在している損傷の数に依存しており、それゆえ線量率とともに顕著に減少し、線量に比例的でなく線量の2乗に比例的になる。LNTは非常に低い線量において染色体異常を予想するために用いられるべきではない(§6.5.3を参照せよ)。

6.3 発癌のプロセス(§2を参照せよ)

前述のように、メカニズムは、組織内の細胞増殖をコントロールするシステムから外れた細胞に対し多細胞生物を保護するために存在する。これらのメカニズムの影響は、克服されることができるか、高線量によって(p53のように原因となる遺伝子の変異が挙げられる)損なわれるかといったことになる。

6.3.1 動物において、種(そしてマウスの系統)、組織、癌のタイプに依存しながら、発癌性における線量と影響の関係は極端に変化するものであり、めったに線形にならない。動物において、閾値が存在しているように思えるのみならず、実験の40%においてホルミシスさえ存在している[79]。線量率は大きな影響要因になる。

6.3.7 癌が非常に低い線量によって誘発されるということについて除外することができない可能性があるが、全ての利用できる生物学的データは非常に低い線量では、細胞死を導くDNAの損傷[60,241]を修復することに失敗することと間違いのないDNA修復との組合せがこのリスクを最小にもしくは存在しないもの[143]にするはずであるといったことを示唆している。これらの現象と活性酸素種の効力をなくす営みはホルミシス効果を説明するかもしれない[49,50,79,86,87,125,130]。ホルミシスは同様に免疫のメカニズムの刺激によって部分的に説明されることができる[157,286]。いくつかの予備的データは、ホルミシス効果が人間において観察されうることを示唆している[55,131,155,285]。

6.3.8 傍観者効果(§3.5.1を参照せよ)とゲノムの不安定性の誘発が低線量において有意な数の癌の原因になる可能性があり、それらは低線量において超線形の線量と影響の関係を導きさえするといった仮説がなされてきた。しかしこの仮説は妥当であるとは思われていない(§3.5を参照せよ)。人間において(§5.5を参照せよ)そして動物において(§4を参照せよ)、α線放射性核種によって被曝した後の閾値の存在は、わずかな細胞が損傷を受けていない組織において影響があるときの傍観者効果の有意な影響を除外することを可能にする。動物のデータ(§4を参照せよ)は、この仮説が妥当でないことを強調し、ホルミシス効果の存在を示している。

6.3.9 疫学(§5を参照せよ)は以下の2つの仮定のいずれかを除外することができない:ⅰ)100mSv以下の線量において検出可能な発癌性への影響が存在しないことは不十分な統計的検出力によるものである、ⅱ)それは、閾値の存在によりあらゆる発癌性への影響が存在しないことに起因している。動物や人間におけるα線放射性核種(ラジウム、トリウム)による被曝に関連したデータは確実に、ある状況において閾値が存在することを示している。科学の厳密性は、普遍的なモデルを調べるとき、我々は最初に50〜100mSvの間の線量に対する全ての疫学的データを分析すべきであり、それから全ての放射線生物学と疫学上の利用可能なデータと一致するモデルを探すべきであるということを求めている。線形性を仮定することは科学的態度でなく、単に用心した姿勢になる。それは、広島と長崎における生存者の固形腫瘍に関する最近のデータと一致していない[224, 291]。20mSv以下の線量における発癌性への影響を推定するためにLNTを用いることは現在の放射線生物学に照らして正当化されるものではない。

6.4 2003年にはBrenner他、数名の放射線科医と疫学者は、LNTの関係を肯定する議論を進める記事を公表した。彼らの結論はこのレポートにおける結論と異なっている。

6.4.1 - 生物学的議論 この記事は、10mSvの線量をともなう急性照射の後、発癌性への影響が人間に生じることを考慮している。この線量において、約10の電子が核を通過し、著者達は適切に、各々の電子による物理現象の間に相互作用がないことを述べている。彼らはこのことから、1つの電子(1mSv)は10個の電子による影響の10分の1に等しい発癌性への影響の原因となっていることを推論する。この推論は細胞に引き起こされた防御反応を無視しており、それは物理現象を考慮するのみであり、最初の細胞の損傷による防御反応を見逃している。各々の電子による物理現象は同一であるが、数mSv(核が数個の電子によって通過されるとき)の線量によって誘発される細胞防御は、活性酸素種の酵素システムやシグナルメカニズムによって解毒作用が活性化される(§3を参照せよ)。

6.4.2 約10mSvの線量で胎児が照射された後の発癌現象の誘発についてはまだ疑義をさしはさむ余地がある(§5.3を参照せよ)。さらに胎児から子供、大人に対して外挿することは議論の最中にある。50〜500mSvの間の線量のレンジで多くの腫瘍部位において、発癌性への影響は年齢にともない顕著に変化している。違いが胎児と子供、幼い子供の間においてさらに大きくなるかもしれないと考えるための理由が存在している。

6.4.3 原爆の生存者において行われた研究

6.4.3.1 全ての著者達は、100mSv以下において癌の発生(全ての年代と両性にとって)における有意な増加は見られないことに同意している。しかし、低線量において有意でない増加があるが、同様の相対リスクの超過(ERR)をともなうため、Brenner他は[43]このことから、人は被験者が均一の集団を構成しているときに5〜125mSvの間の線量をともに被曝する全ての被験者を考慮することが可能であることやこの全体の集団に対して有意な増加が存在することを推論している。この結論は方法論的観点から問題がある。この全体の集団に対して観察された有意な超過は実際、著者達が仮定するように、5〜100msVの集団より5〜125mSvの集団におけるさらに大きい数の被験者による検出力の単純な増加によるものである可能性がある。しかし、それは同様に数十mSvにおける閾値の存在や非線形の関係と一致している。したがって、この超過はLNTを肯定する議論として用いられることができない。

6.4.4 100mSv以下の線量における発癌性への影響を支持するためにこの公表で用いられる他の研究は任意に選択されたと思われる。小児白癬の治療のため頭皮に照射した後の甲状腺癌の研究は線量測定においてバイアスがあり、それはこの低い線量においてリスクが増加することを結論づける唯一の研究になり、一方同じトピックにおけるいくつかの同様の研究は同じ結果を見出していない。ロシアとアメリカの核実験からのフォールアウトにより汚染された地域における子供の白血病について引用される他の2つの調査[65.259]は地理的相関に基づいており、それはこのタイプの研究の限界を示している。彼らの研究は、チェルノブイリ事故[211]の結果に対して行われた同じタイプの他の研究の結果や、広島と長崎の生存者における研究を含む、子供の頃に照射された後白血病において行われた全ての集団もしくは症例管理の結果と一致していない。

6.5 2004年12月にICRPのタスクグループのレポート案がウェブ上に投稿された[118]。それは関連する線量と影響の関係の選択によって生じる問題を議論している。高い科学的質を有するこの文書は最近の放射線生物学のデータを分析している。しかし時として意外にも、閾値の仮説を除外することができず、それはかなり妥当なこととして記されているのだが、様々なセクションと一般的なセクションの結論は、少なくとも暫定的な基礎として、LNTの使用を支持している。主な議論は以下の立場を肯定して進められている。

6.5.1 疫学的レベルでは、子宮内における胎児への影響や気胸をモニタリングするために蛍光透視検査を繰り返した後観察される乳癌を考慮すると、著者達は、10mSvの線量で人間における発癌性への影響が存在するという感じを受けている。彼らは同様に、統計的に有意でないにもかかわらず、他の研究における知見が10〜100mSvの間において発癌性への影響が存在すると示唆していることを考慮している。返事として我々は以下のように言うことができる。

1. 子宮内における照射におけるOxford Studyからのデータは信頼できないものであり、LNTに対する科学的妥当性を与えることができず(§5.3や§6.4.2を参照せよ)、さらに彼らの関心は胎児にある。子供や大人に対する外挿は注意を必要とするものになる。最後に、仮にこの効果が確認されたとしても、我々は約10mGyの線量が間違った修復の原因となる可能性がある修復システムを有効にする一方、これらのシステムはさらに低い線量によって有効にされないことを知っているので、それは10mSv以下の線量に対する外挿を正当化しないだろう[60,241]。

2. 繰り返されたX線検査の発癌性への影響は、蓄積線量が0.5Gyをこえるときのみ観察される。事実、ICRPのタスクグループ[113]によって引用された文書の中で調査された集団におけるごく少数の女性は500mSv以下の線量を被曝していた。この文書はこれらの線量におけるいかなる情報も与えていない。そのためこの研究は、もし累積線量が500mSvかそれ以上に達するならば、10や20、30mSvのオーダーの線量が追加的な影響を及ぼす可能性があるが、10mSvが発癌性を示す訳ではないことを明らかにしている[113]。

6.5.2 放射線生物学のレベルでは、著者達は、電離放射線により誘発された高い比率の傷は修復するには複雑で難しく、それゆえ内的原因の傷と比較することができないと示唆している。加えて、彼らは同様に、細胞死は効率的なメカニズムであるが、全体としてそれが効果的であると示唆するものは何もなく、それゆえいくつかの損傷を受けた細胞が生き残り、コントロールを避け、最初の細胞のクローンを生じさせることができるということを強調している。

これらのコメントは適切であるが、返答として我々は以下のような指摘をすることができる。

1. 修復することが難しい複雑な傷をもつ細胞は死(分裂死や細胞死)によって除去されることを避けるだろうといったことはありそうもない。

2. 実際には、LNTに関する問題はここには存在しておらず、それは、ゲノムの傷の数が低いか高いかによって間違った修復の確率が同じになるかどうかを発見することになる。LNTモデルは、損傷が切り離されているかもしくは同じ細胞や隣接した細胞における他の損傷と関連しているかどうかに関係なく、各々のDNAの損傷が正常な細胞を腫瘍細胞に変える確率やこの腫瘍細胞が浸潤癌を生じさせる確率が一定であるといった仮定に基づいている。むしろ驚くべきことに、この重要な問題はそのレポートにおいて取り扱われていない。しかし、全ての利用できるデータは、この確率が実際線量にともなって変化していることを示している(§3を参照せよ)。同様に、細胞死の効果は一定でなく、線量にともない変化している。もしp53のように関連した遺伝子が損傷されているならば、細胞死は起こらない。

調整のコントロールから逃れるケースは常にありうるが、もし組織がその損傷を受けていない組織を保持しているならば、それは起こりそうもないだろう(§5.5を参照せよ)。さらにいくつかの組織、例えば小腸、骨、皮膚、そして胸や大人の被験者における甲状腺でさえ、数百mSvの線量における発癌性への影響がないとの議論は、ゲノムは細胞において同じであるので、組織構造や防御メカニズムの重要性を強調している。甲状腺や胸にとって、小さい子供に見られる放射線発癌性の間の違いは組織の系統や細胞間の関係を例証している。後者は強く発癌性に影響している(§2を参照せよ)。

6.5.5 著者達は動物におけるデータがLNTモデルを支持しているとの感じを受けている。我々の結論はこの点に同意していない(§4を参照せよ)。我々はホルミシスの重要性を見落とすべきではないとの感じを受けている。ホルミシスは動物の実験[79]の40%において報告されており、さらにホルミシスの生物学的基礎は現在理解されていると思われており[87]、その存在は確かなものである[50]。またTanookaのメタ分析[262]は、実際、全ての実験における腫瘍に対する実用的な閾値が存在すると示している。単純にDDREFを導入することがこれらの事実を考慮に入れることを許容するだろうという観点は正当化されるように思われない。線量率や動物における発癌性における分割の影響は、現象が複雑すぎてLNTモデルによって考慮されることができないといったことを示している。

6.5.7 結論:この高い質のレポートは、我々が10mGyのオーダーの線量で発癌性への影響の可能性を除外することができないと示している。しかし、発表された議論を分析すると、この影響が、もし存在するならば、このような線量にとって非常に低くならなければならないと明らかにしている。著者達は、線量と線量率に関連した防御メカニズムの影響における違いを分析している。彼らのレポートは、防御反応の影響は一定であり、現在のデータと一致していないのだが、それを仮定している。それは10〜100mSvにおけるLNTモデルの妥当性を確立していない。たとえ完全に除外されることができないとしても、5mGy以下の線量に対する発癌性への影響の仮説はありそうもない。しかし、一方で、X線検査における便益と費用をバランスさせるときに非常に仮想的なリスクを重視することは有害になるだろう[274]。大半のX線検査は5mGy以下の線量を被曝するが、それらのリスクの評価は妥当な科学的データに基づかなければならず、このリスクの過大評価は集団における健康に有害な影響を与えるだろう。特にLNTモデルは全ての固形腫瘍を纏めて考慮するので、それを非常に低い線量の影響を評価するために使われることはできない。この蓄積された研究において、関連した各々の癌にとって線量と影響との関係が異なっていることを唯一の理由として、その関係は線形であると思われてもよい。

準備段階のICRPのレポート[118]の冒頭で、LNTモデルの直接の結果である集団線量の考え方は、多数の被験者に対して管理された非常に低い線量は少数の被験者に対して管理されたさらに高い線量と同じ発癌性への影響を有することを仮定しており、利用できるデータはこの仮定を支持することが述べられている。現在のレポートは逆の結論になり、それは、所与の集団線量にとって、リスクは線量が20mGy以下であるときよりも0.2Gy以上の線量を被曝したときのほうがかなり大きくなることを考慮に加えている。

7 線量と影響の関係の含意

7.3 線量と影響の関係の選択は放射線防護の観点から公衆衛生の優先順位に影響を及ぼす。もしLNTモデルを採用するならば、効率性に対する追求はさらに大きい数によって被曝される低線量を減少させることを促す傾向になるだろう。一方、もし低線量が非常に少量存在するかもしくは危険性がないと考えられているならば、この費用がかさむ削減は不必要であり、取り組みはその代わりにさらに高い線量を減らすためになされるべきである。この例はいかなる予防戦略であれ潜在的にリスクの量的評価に基づいていることを示している[295]。

7.4 医療において同様に、最も脆弱な被験者に最も高い線量を被曝させる検査(子供におけるCTスキャン)に焦点をあてるよりむしろ最も一般的な検査(胸部X線)における取り組みに集中することが促される可能性がある。我々は以前の戦略が生産的でないことを危惧している。医療では、電離放射線を用いる診断上もしくは治療上の処置はあらゆる医療処置のように正当性の原則を条件としなければならない。法律は明示的に、照射のリスクが患者に期待される便益に対し比較考量される措置に含まれることを要求しており、2つの潜在的な健康上のリスクを比較する必要がある。LNTといった線量と影響の関係に基づいたリスク評価[24]は、X線検査のリスクを過剰に評価することを導くことがあり、そのためこれらの検査における便益とリスクの比較を歪める形になるだろう[274]。

- したがってLNTの関係は架空のリスクを理由にして役に立つ検査を阻むことを促す可能性がある。逆にもし我々が、リスク(単位線量あたり)が線量とともに増加していると考えているならば、そのときの取り組みは、検査(例えば子供にとってのCTスキャン)やそれらの頻繁な繰り返しが20、30mSvより多い線量を促している状況に焦点をあてるべきである。この戦略は、さらに費用がかさみおそらく効果的でない全ての検査に対する線量を減らす試みより適切であると思われる。

7.5 最後に、このLNTの関係がしばしば多数の人々にとって不正確に適用され、LNTモデルの基礎における大きな集団によるわずかな線量の影響を増加させている。この誤った使用の一例は、数百万人の人々が数μSvに被曝したときに誘発される死亡者数を計算することになる。UNSCEARやICRPが指摘しているように、集団線量に基づくこれらの計算はいかなる意味も有していない。それにもかかわらず、いくらかの人々はまだそれらを適用しており、そのことが不適切な結論を導いている(実際、チェルノブイリ事故の後における大集団の避難が挙げられる)。あらゆる科学的に正当な理由なしに、これらの計算は、放射線の非常に小さな線量でさえ危険であるといった考えを広めている。放射性廃棄物における議論やLNTモデルに基づいたリスクの計算は、この関係やLNTに基づいた計算が生物学的、医学的問題の理解に寄与せず、逆に、それらをさらにあいまいにする可能性があることを示している。

8 提案

8.1 分子生物学の新しい技術のおかげで、細胞小器官や細胞のレベルで放射線の作用のメカニズムや電離放射線の発癌性への影響に対する細胞、組織、そして生物全体の防御反応を理解することにおいてかなりの進歩が過去10年間においてなされてきた。攻撃から身を守るために生きている生物の能力は驚くべきことではなく、19世紀には確立されていた(Claude Bernard)。それなくして、生きている種は生き残ることができないだろう。生物学における進歩はこれらのメカニズムのより良い理解を可能にしてきた。それにもかかわらずさらに詳細な調査が可能であり、行われるべきである。

防御メカニズムの効果、細胞によって用いられる戦略の多様性、発癌性のリスクを減らし、除去する組織や生物全体が現在より良く理解されている。それらは強く、閾値や実用的な閾値が存在し、動物においてと同様に、いくつかの癌の部位において、ホルミシス効果さえ存在していることを示唆している。電離放射線や紫外線のある海の中で進化してきた30億年の間、生命は、自然放射線(1〜20mSv/年)により被曝したのと同じオーダーの大きさの線量による有害な影響を妨げることが可能である防御や修復のシステムを発達させてきた。これらの防御はさらに高い線量において損なわれ、中間のゾーンの線量の影響が、特に高い線量率における20〜100mSvの線量や低線量率における適度な照射(500mSv)に対して決定されるべきである。これらの分野において、取り組みが疫学(メタ分析、異なったタイプの癌の頻度や影響を及ぼされる被験者の年齢における分析)や細胞生物学においてなされるべきである。

 ICRPの防護措置が内部被曝を十分に考慮していないと
いった見解をECRRが認めているといったことに関し、
ECRR2010年勧告の一部を訳すことから始めたい。これ
は昨日の記事の続編になり、URLは以下の通りになる。
http://www.euradcom.org/2011/ecrr2010.pdf

欧州放射線リスク委員会2010年勧告
低線量の電離放射線による被曝の健康への影響

1 ECRR

1.2 2003年以降の展開

2003年以降の期間においてCERRIE委員会では、放射線
リスクの分野は完全に変わった。ECRRが始まったとき、
内部被曝や細胞にとって重要なDNAにおける効果におけ
る異なる反応についての問題は大体において新しいもの
であり、少なくともICRPによって避けられていた。当時
のリスクモデルの疫学的基礎は一貫して高線量における
外部被曝に対するものであり、ICRP1990における日本の
原爆生存者の研究とその解釈がある。これらのデータは
'放射線恐怖症'のような警告的な報告をしっかりと整理し
ていたICRPやUNSCEARによって無視されてきたように
思われるが、当時からチェルノブイリ事故の健康への影
響は非常に明確であった。それにもかかわらず放射線恐
怖症は遺伝子の発展がECRR2006やECRR2009に貢献し
ている著名な自然科学の研究者によって記されているヨ
ーロッパヤチネズミ、小麦や他の生命体の数世代に影響
することはなかった。複数の地域(旧ソ連諸国やヨーロ
ッパ諸国の双方)に影響したチェルノブイリにおける実
際のデータの結果はECRR2003モデルの予測を証明した。
当時からウラン兵器いわゆる劣化ウランのフォールアウ
トにあるように、分子や粒子の形態においてウランとい
った元素による被曝の異常な影響に関する報告が同様に
あった。これはウランに対する内部被曝の影響に関する
研究への多大な努力に繋がっていた。この研究により提
起された問題は1997年におけるECRRによってもたらさ
れ、それはECRR2003モデルやDNAに対する化学的親和
性や崩壊の状態に基づいたある同位体に対する内部被曝
のための重み係数の展開の基礎を形成した。

2009年初めにICRPの科学局長であり、その1990年と20
07年報告の双方の編者であるJack Valentinが辞任した。
2009年4月21日にストックホルムで彼とECRRのChris
Busbyの間で開かれた議論で、彼はICRPリスクモデル
が人間の集団に対する被曝の健康への影響を予測したり
説明したりするために用いられることがかなわなかった
ことを述べた。彼が続けたことに、これは内部被曝に対
する不確実性が非常に大きく、いくつかのケースでは2
ケタのサイズの問題になるからであった。これは設立
以来ECRRの議論になり、ECRR2003に記されている。
Valentinは同様に(このビデオインタビューの中で)彼
はもはやICRPによって雇われていないので、ICRPや
UNSCEARが研究報告によって提起されているチェルノ
ブイリや他の影響を無視していることは間違ったことで
あると考えているといったことを話すことができると述
べていた。

9 低線量での健康への影響を確立すること:メカニズム
とモデル

9.6 線量と影響の関係

放射線量と影響の間の関係が盛んに研究されている。
ICRPのリスクモデルは、低線量でその関係がLNTとして
知られる影響が現れるためには閾値がなく線形で表され
ることを仮定している。初めにこれは、安全な線量がな
く、最低の線量でさえ健康被害を及ぼす有限の蓋然性を
有することを示している。二番目に、線量を2倍にする
ことは影響を2倍にする原因となり、この仮定には基本
的に2つの理由が挙げられる。

第1にそれは前述のセクション9.2で説明されている放射
線作用について知られていることへの配慮から判断され
る。明らかにもし健康上の障害が細胞のDNAに関連して
いるならば、そしてそれは順に起こる打撃の結果である
が、また他方でもしこれらの打撃が時間と空間で離れた
距離により独立に行われるならば、その影響は線量に線
形で比例的にならねばならない。細胞は打撃されるか、
打撃されないかいずれか一方なので、1回の打撃より低い
状態はなく、安全な線量は存在しない。

線量と影響の関係が線形であると信じるための第2の理由
は、実験における細胞培養や動物そして外部放射線に対
し被曝した人々からのデータが線量に対し線形で比例的
である影響を示すと解されるからである。ただしこれは、
低線量においてより小さい(もしくは有益でさえある)
と主張する人々とデータは低線量でより高い影響を示す
と主張する人々によって議論されている。外部照射の研
究のケースでは、検討された小さな集団は広い信頼区間
を有するといった結果になり、多くの様々な曲線がデー
タを通じ描かれている。

線量と影響の関係における仮定は放射線被曝の疫学的研
究の理解にとって重要であるため、委員会はたいへん慎
重にこの分野を研究した。委員会は、外部放射線の近似
を除いて、線量と影響の関係は低線量の領域において線
形になりそうもないと信じるに十分な証拠があると結論
づけ、低線量でかなり高い影響を示す関係を肯定し、
LNT近似を却下した。この理由は以下の通りである。

9.6.6 ホルミシス効果

たくさんの動物と試験管内での研究は、少ない線量の放
射線が'ホルミシス'と名付けられた保護上の効果(ギリシ
ャ語のhormein,'to excite'由来)を有する証拠として引用
されている。この線量と影響の関係では、初めに放射線
の線量が増加するので曲線は落ち込むことになる。線量
が増加するとき曲線は再び上昇し、影響も増加するけれ
ども、最低線量の制御はこのようにまだ低線量であるけ
れどもわずかにより大きい線量より大きい健康上の障害
を示している。曲線は図9.4に示されている。

この影響に対し与えられる説明は、最低線量で細胞修復
の増加された効果が放射線被曝により誘発されていると
いうことである。したがって線量が増加すると、初め放
射線は発癌の減少に伴い、保護効果を有することになる。
委員会は慎重にホルミシス効果とそれを支持する証拠を
考慮しており、そのようなプロセスはありうると結論づ
ける。効果は中程度の線量のレンジ(例えば20mSv以上)
で起こるとみられ、多くの説明を有する可能性がある。

しかしながら、それはホルミシス効果のいくつかの証拠
が人工的に発生したものからの結果になるといったこと
かもしれない。もし低いレンジにおける線量と影響の関
係が2つのフェーズをもつ曲線に随うならば、明白にホ
ルミシス効果を示すために必要とされる全てのことはゼ
ロ線量/ゼロ効果点を除外することになる。それは、高線
量における実験からの演繹的結論がこの低線量の領域で
そのような変化の可能性と乗じ合わせることができなか
ったため、点がばらつきとして解釈されたかそれらが外
れ値として最低線量と影響の関係を除外することによっ
てホルミシス効果の落ち込みを強いられたかのいずれか
といったことになるかもしれない。

委員会は条件付きで、ホルミシス効果は存在するかもし
れないが、もしそれが存在するなら、その長期の影響は
前段に記された理由から有害であるかもしれないと結論
づける。委員会は、放射線防護の点でホルミシス効果を
考慮に入れるべきではないと推奨する。

9.6.7 線量と影響の関係における委員会の結論

委員会はICRPのLNTの仮定を小さなレンジで成立するか
もしれない近似を除いて無効であるとの主張に同意し、
事実、委員会はプラグマティズムの問題として低線量の
領域においてそのような関係を採用している。あらゆる
タイプの被曝やあらゆる目的のために普遍的な線量と影
響の関係が存在すると示すための、そしてそのような関
数が致命的な過度の単純化であると仮定するための十分
な証拠はない。ただし、0から約10mSv(ICRP)までの低
線量のレンジにおける影響がある種の超線形関数や分数
指数関数に随う可能性があると仮定するための十分な理
由は存在する。2つのフェーズをもつ線量と影響の関係
が存在するための十分な理論的、経験的証拠があるので、
委員会は強くいかなる疫学的見解もあらゆる形式の連続
的に増加する線量と影響の関係に一致しないといった基
礎の下に捨て去られるべきでないといったことを推奨し
ている。

 ここからは私見になるが、ICRP, BEIR, ECRRいずれ
にせよLNTモデルを採用しているが、低線量の扱いに関
して、BEIRが線形モデルを採用し、ECRRが非線形モデ
ルを採用しているといった違いがあり、両者共に低線量
被曝の問題について詳細にかつ慎重に議論を行っている。
そしてECRRは内部被曝の問題に言及している。

 何故メディアで風評被害が問題になるかと言うと、
「爆発事故」と言えば良いものを「爆発的事象」と言い
換えたり、「長期に亘ると晩発性障害の可能性がありま
すが、」と一言ことわれば良いものを「ただちに影響が
ない」と言い換えたり、「10mSv〜20mSvについてこの
ような議論が行われておりますが、」と問題点を公表す
れば良いものを「緊急事態だから20mSvで安全である」
と言い換え、未だに基準となる数値が改善されていない
ことに加え、「ICRP以外に安全を考慮するための考え方
は複数あり、このような議論を行った、」と問題点を公
表すれば良いものを「ICRPではこう、原子力安全委員会
ではこう、」では賛同を得ることは難しいと考えられ、
メディア自体も既存の権益構造を体現しており、一連の
プレーヤーにおける科学的思考といったものがすっぽり
欠落している点が今後に向けての課題になるだろうと考
えることがある。

 事実に目を向け、緊急事態は継続しているが、これは
長期化する様相を呈しており、早く除染を行うなど、や
ることに手をつけていない状況は、おそらく関西圏にと
ってこの東日本の状況がまだ理解されていないことも背
景にあるのだろうかと考えることがあった。

 問題の本質は単純で、権威を有り難がり、事実を考慮
しないことにあると考えられ、公的立場にあると認識し
ているならば、理論的背景と事実の両面から説明できる
ようにならないことには当面の間現在の問題は続くもの
と思われるときがある。またこの続きは機会があるとき
に行うこととする。

 明日もがんばろう。

 では。

 ICRPの防護措置は内部被曝の影響を十分に考慮に入れて
いないといった見解をECRR2010年勧告の中に認めること
ができるといった議論があるが、ここでは2005年における
BEIR VII – Phase2の一部を訳すことから始めたい。以下に
URLを記す。
http://www.nap.edu/openbook.php?isbn=030909156X

低レベルの電離放射線の被曝による健康リスク

BEIR VII フェーズ2

一般向け概要

低線量の電離放射線の意味は何か

このレポートでは、委員会は低線量を低LET放射線における
ほぼゼロから約100mSv(0.1Sv)までの範囲における線量とし
て定義する。委員会は関連するデータが利用可能である最も
低い線量を重視した。世界における低LET放射線の年間自然
被曝量は約1mSvになる。

委員会により審査された研究

委員会が審査した論文のいくつかは、低線量被曝がLNTモデ
ルの結論が示唆するより有害であるといった議論を含んでい
た。BEIR VII委員会は、放射線の健康への影響の研究は全体
としてこの見解を支持しないと結論づけた。本質的には、委
員会は、線量が高ければリスクは大きく、線量が低ければ、
人間の健康に対し害を及ぼす可能性は低くなると結論づける。
この結論の理由について考えるための幾つかの直感的な方法
がある。まず、電離放射線の一回の放射は細胞にダメージを
与える可能性がある。しかし、もし1つだけの電離粒子が細胞
のDNAを通過するならば、細胞のDNAに対するダメージの可
能性は仮に10、100、1000に及ぶ電離粒子が通過する場合より
比例的に低くなっている。放射線と細胞のDNAとの物理的相
互作用から低線量でより大きな影響を期待する理由はない。

つまり放射線の健康への影響の評価に関連した研究の全体像
は、低線量の低LET放射線に関連したリスクはLNTモデルに
基づいて予想される以上に大きくないことを信じるための説
得力のある理由を提供している。

なぜ委員会は、低線量がLNTモデルによって推定されるより
実質的に有害でないといった見解を受け容れないか。

前段のセクションのテーマと対照的に、委員会に提供される
いくつかの論文は、LNTモデルは低レベルの電離放射線の健
康への影響を誇張していると示唆している。それらは、リス
クがLNTで予測されるより低く、そのリスクは存在しないか
もしくは放射線の低線量は有益でさえあるかもしれないと述
べている。委員会は同様にこの仮説を許容しない。代わりに
委員会は、大半の情報が低線量でさえいくらかのリスクがあ
ることを示していると結論づける。この一般向け概要におけ
る簡単なリスク計算が示すように、低線量でのリスクは小さ
いながらも存在するだろう。それにもかかわらず固形腫瘍に
対する委員会の主なリスクモデルは、線量の減少に伴い、癌
発生率において線形に減少することを予測している。

疫学データと生物学的データの双方は、関連が測定されうる
線量での線形モデルと一致している。電離放射線の健康への
影響を示す主な研究は、1945年の広島と長崎における原爆の
生存者を分析したものになる。これらの生存者の65%が低線
量の放射線を被曝し、それはこのレポートで用いられる定義
によると低いものになる(100mSvと同等もしくはそれ以下)。
閾値や有益な健康への影響を肯定する議論はこれらのデータ
によって示唆されていない。疫学における他の研究もまた電
離放射線の有害性は線量の関数であるといった見解を支持し
ている。さらに子宮内でもしくは早期の段階で被曝した子供
における癌の研究は、低線量で放射線により誘発された癌が
発生しうるといったことを示唆している。例えば小児癌のオ
ックスフォード調査は"15才までの子供たちの間における発
癌率が40%増加する"ことを見出し、この増加は10〜20mSv
のレンジにおける線量で発見されたものである。

 一般向け概要の抜粋のみから意見を引き出すことはフェア
ではないと感じることがあるが、メディアを眺める限り、こ
れと異なった見解が大手をふるっているようだと考えること
があったのは、現在議論を重ねている問題だからだといった
見方に加えて、既存の権益構造が果たした役割も無視できな
いだろうと考えることがある。

 ここでの委員会とは、Committee to Assess Health Risks
from Exposure to low Levels of Ionizing Radiation, National
Research Councilになり、あえて訳さなかったが、いずれに
せよ、求められるものは被曝線量を低下させる措置であり、
そのために除染が必要とされているのだろうと考えることが
あった。

 実際の所、内部被曝の影響と低線量被曝の影響を十分に考
慮するために必要とされるものがまだ多く残されているのだ
ろうと考えることがあり、通常の緊急事態はこのように長期
化することを想定されていないだろうから、それに応じた施
策といったものが求められるのだろうと考えることがあった。
この続きはまた機会が許すときに記すことにする。

 明日もがんばろう。

 では。

 インターネット上でICRP2007年勧告(Pub.103)を手に入
れようとすると英語版はExtractのみになり、フリーである
程度の情報量を確保するためにはフランス語版等他の言語
を選択する必要があるようだ。そしてURLを以下に示す。
http://www.icrp.org/docs/P103_French.pdf

 これをロベール、仏英やGoogleを用いて読み込んでいく
ことになるが、その抜粋の一部の訳を以下に示すことにす
る。

ICRP2007年勧告(Pub.103)

5 人間における放射線防護のシステム

5.9. 被曝線量の制限と基準レベル

5.9.3. 被曝線量の制限と放射線源に関連した基準レベル
の選択における影響要因

 制限のイン 
ターバル/
基準レベル
a (mSv)

 被曝状況の特徴  放射線防護の観点 
からの要件   
        例        
20〜100
b, c  
制御できない放
射線源または非
常に不安定な被
曝線量を減少さ
せるための行動
により被曝した
個人。被曝プロ
セス上の措置に
より一般的に制
御された被曝。
被曝線量の減少を
考慮しなければな
らない。被曝線量
が100mSvに近い
とき、被曝線量を
減少させるためさ
らなる努力が採用
されなければなら
ない。個人は放射
線リスクと被曝線
量を減らすために
取られる措置にお
ける情報を受け取
らなければならな
い。      
放射線緊急事態
の場合に最も高
く見積もられた
被曝線量のため
に定められた基
準レベル   
1〜20一般的に個人は
被曝の状況から
生活上の便益を
受けるかもしれ
ないが、被曝自
体の必要性はな
い。被曝は放射
線源においても
しくは被曝プロ
セス上の措置に
より制御される
ことができる。
もし可能であるな
らば、個人がその
被曝線量を減少さ
せることを許容す
るために一般的な
情報を利用可能に
しなければならな
い。計画された被
曝状況にとって被
曝の個々の評価と
助言が行われなけ
ればならない。 
計画的な被曝状
況における職業
上の被曝のため
に定義された制
限。放射性医薬
品の対象となる
患者の看護士や
付添人のために
定義された制限
。居住地におけ
るラドンによる
最も高く見積も
られる被曝線量
のための基準レ
ベル。    
1以下生活上の便益の
対象とならない
または一般的に
社会に便益を対
照的に与える状
況からほとんど
生活上の便益を
受けることのな
い放射線源から
被曝する個人。
直接あるレベル
の放射線源に関
連する措置によ
り一般的に制御
された被曝、そ
のために放射線
防護の観点から
要件が前もって
計画されること
ができる。  
被曝レベルにおけ
る一般的な情報は
利用可能であらね
ばならない。定期
的なチェックは被
曝レベル上のよう
に被曝プロセス上
において実現され
ねばならない。 
計画された被曝
状況における一
般公衆の被曝の
ための制限  

a: 急性被曝線量もしくは年間被曝線量
b: 例外的な状況で、よく知らされた志願者は、人命救助
 のため、放射線により誘発された健康上の深刻な被害
 を避けるため、もしくは壊滅的な状況の進行を避ける
 ために100mSv以上の被曝線量を受けることができる。
c: 関連する器官や組織における確定的影響の被曝線量の
 閾値を超える状況は対策の実施を常に必要とする。

(239) 最初のインターバル、1mSv以下は個人が一般的に計
画された被曝線量を受ける被曝状況にあてはまり、そのこ
とは直接そのための生活上の便益を示すことにはならない
が、社会のために役立つことがあり得る。実際の計画され
た枠組みにおける一般公衆からなる構成員の被曝はこのタ
イプの状況の例として妥当である。制限や基準レベルは、
一般的な情報、環境に対するモニタリング、測定、評価が
存在する状況においてこのインターバルの中に選択される
だろう、そしてその状況下、個人は情報を受けることはで
きるが、助言を受けることはない。対応する被曝線量はさ
らなる自然放射線の追加的増加を示すことがあり、それは
高い防護基準を所与とすると、基準レベルより2ケタ小さ
い大きさになる。

(240) 2番目のインターバル、1〜20mSvは、個人が被曝の
状況から直接生活上の便益を受ける状況にあてはまる。こ
のインターバルにおける制限や基準レベルは、しばしば個
々のモニタリング、被曝線量の測定や評価が存在する状況
において設けられ、その中において、個人は助言や情報を
与えられる。計画された被曝状況における職業上の被曝の
ために設けられる制限がその例になる。異常に高い自然放
射線量を含む被曝状況や事故後の復興段階は同様にこのイ
ンターバルの中にある。

(241) 3番目のインターバル、20〜100mSvは、普通でなく
そしてしばしば非常に厳しい状況にあてはまり、そこで被
曝を減らすためにとられる措置はトラブルを伴うかもしれ
ない。基準レベルやとりわけ50mSvより低い例外的な被曝
にとっての制限は、受ける生活上の便益が比較的高い状況
であるこのインターバルの中に定義されるものと同等であ
る。放射線緊急事態における被曝線量を減少させるために
とられる措置はこのタイプの状況における主要な例になる。
委員会は、ほぼ100mSvに達している被曝線量がほとんど
常に防護措置の妥当性を示すと考えている。さらに関連す
る器官や組織に誘発される確定的影響における被曝線量の
閾値を上回る状況は常に防護の実施を要求する(またICRP
1999aのパラグラフ83を参照のこと)。

 確定的影響と確率的影響の区別、急性障害と晩発性障害
の区別を行う必要があるが、前者にフォーカスした結論と
後者にフォーカスした結論は異なるだろうが、基準レベル
の意味ついてはこの103が具体的に示しており、依然とし
て被曝線量を下げる必要性があることに変わりはない。

 例えがよくないかもしれないが、太平洋戦争における特
攻隊の発想を避ける必要があり、できる限り被害を少なく
するための処方箋としてICRPの勧告が存在し、そのために
は何よりも被曝線量を下げる努力、つまり除染の必要があ
り、一方で事故が終息していないのだが、長期化している
ことを考慮すると、例え二度手間であろうとも被曝線量を
下げる努力を継続していかなければならないだろう。

 楽観も悲観もできないなか、地産地消では福島の人々の
リスクが増加することになり、高い防護基準を前提にする
と一般人にとっては1mSv以下が望ましいと示されている
のだが、緊急事態は現在なお継続中であるといったことを
鑑みると、あらゆる方策でもって被曝線量を下げる努力が
何よりも必要とされているのだろう。この続きは機会があ
ればそのときに記すことにする。

 乱筆失礼、明日もがんばろう。

 では。

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