被曝線量について理解を深めるためにICRP2007年勧告(Pub.103)を眺めながら考えたこと

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 インターネット上でICRP2007年勧告(Pub.103)を手に入
れようとすると英語版はExtractのみになり、フリーである
程度の情報量を確保するためにはフランス語版等他の言語
を選択する必要があるようだ。そしてURLを以下に示す。
http://www.icrp.org/docs/P103_French.pdf

 これをロベール、仏英やGoogleを用いて読み込んでいく
ことになるが、その抜粋の一部の訳を以下に示すことにす
る。

ICRP2007年勧告(Pub.103)

5 人間における放射線防護のシステム

5.9. 被曝線量の制限と基準レベル

5.9.3. 被曝線量の制限と放射線源に関連した基準レベル
の選択における影響要因

 制限のイン 
ターバル/
基準レベル
a (mSv)

 被曝状況の特徴  放射線防護の観点 
からの要件   
        例        
20〜100
b, c  
制御できない放
射線源または非
常に不安定な被
曝線量を減少さ
せるための行動
により被曝した
個人。被曝プロ
セス上の措置に
より一般的に制
御された被曝。
被曝線量の減少を
考慮しなければな
らない。被曝線量
が100mSvに近い
とき、被曝線量を
減少させるためさ
らなる努力が採用
されなければなら
ない。個人は放射
線リスクと被曝線
量を減らすために
取られる措置にお
ける情報を受け取
らなければならな
い。      
放射線緊急事態
の場合に最も高
く見積もられた
被曝線量のため
に定められた基
準レベル   
1〜20一般的に個人は
被曝の状況から
生活上の便益を
受けるかもしれ
ないが、被曝自
体の必要性はな
い。被曝は放射
線源においても
しくは被曝プロ
セス上の措置に
より制御される
ことができる。
もし可能であるな
らば、個人がその
被曝線量を減少さ
せることを許容す
るために一般的な
情報を利用可能に
しなければならな
い。計画された被
曝状況にとって被
曝の個々の評価と
助言が行われなけ
ればならない。 
計画的な被曝状
況における職業
上の被曝のため
に定義された制
限。放射性医薬
品の対象となる
患者の看護士や
付添人のために
定義された制限
。居住地におけ
るラドンによる
最も高く見積も
られる被曝線量
のための基準レ
ベル。    
1以下生活上の便益の
対象とならない
または一般的に
社会に便益を対
照的に与える状
況からほとんど
生活上の便益を
受けることのな
い放射線源から
被曝する個人。
直接あるレベル
の放射線源に関
連する措置によ
り一般的に制御
された被曝、そ
のために放射線
防護の観点から
要件が前もって
計画されること
ができる。  
被曝レベルにおけ
る一般的な情報は
利用可能であらね
ばならない。定期
的なチェックは被
曝レベル上のよう
に被曝プロセス上
において実現され
ねばならない。 
計画された被曝
状況における一
般公衆の被曝の
ための制限  

a: 急性被曝線量もしくは年間被曝線量
b: 例外的な状況で、よく知らされた志願者は、人命救助
 のため、放射線により誘発された健康上の深刻な被害
 を避けるため、もしくは壊滅的な状況の進行を避ける
 ために100mSv以上の被曝線量を受けることができる。
c: 関連する器官や組織における確定的影響の被曝線量の
 閾値を超える状況は対策の実施を常に必要とする。

(239) 最初のインターバル、1mSv以下は個人が一般的に計
画された被曝線量を受ける被曝状況にあてはまり、そのこ
とは直接そのための生活上の便益を示すことにはならない
が、社会のために役立つことがあり得る。実際の計画され
た枠組みにおける一般公衆からなる構成員の被曝はこのタ
イプの状況の例として妥当である。制限や基準レベルは、
一般的な情報、環境に対するモニタリング、測定、評価が
存在する状況においてこのインターバルの中に選択される
だろう、そしてその状況下、個人は情報を受けることはで
きるが、助言を受けることはない。対応する被曝線量はさ
らなる自然放射線の追加的増加を示すことがあり、それは
高い防護基準を所与とすると、基準レベルより2ケタ小さ
い大きさになる。

(240) 2番目のインターバル、1〜20mSvは、個人が被曝の
状況から直接生活上の便益を受ける状況にあてはまる。こ
のインターバルにおける制限や基準レベルは、しばしば個
々のモニタリング、被曝線量の測定や評価が存在する状況
において設けられ、その中において、個人は助言や情報を
与えられる。計画された被曝状況における職業上の被曝の
ために設けられる制限がその例になる。異常に高い自然放
射線量を含む被曝状況や事故後の復興段階は同様にこのイ
ンターバルの中にある。

(241) 3番目のインターバル、20〜100mSvは、普通でなく
そしてしばしば非常に厳しい状況にあてはまり、そこで被
曝を減らすためにとられる措置はトラブルを伴うかもしれ
ない。基準レベルやとりわけ50mSvより低い例外的な被曝
にとっての制限は、受ける生活上の便益が比較的高い状況
であるこのインターバルの中に定義されるものと同等であ
る。放射線緊急事態における被曝線量を減少させるために
とられる措置はこのタイプの状況における主要な例になる。
委員会は、ほぼ100mSvに達している被曝線量がほとんど
常に防護措置の妥当性を示すと考えている。さらに関連す
る器官や組織に誘発される確定的影響における被曝線量の
閾値を上回る状況は常に防護の実施を要求する(またICRP
1999aのパラグラフ83を参照のこと)。

 確定的影響と確率的影響の区別、急性障害と晩発性障害
の区別を行う必要があるが、前者にフォーカスした結論と
後者にフォーカスした結論は異なるだろうが、基準レベル
の意味ついてはこの103が具体的に示しており、依然とし
て被曝線量を下げる必要性があることに変わりはない。

 例えがよくないかもしれないが、太平洋戦争における特
攻隊の発想を避ける必要があり、できる限り被害を少なく
するための処方箋としてICRPの勧告が存在し、そのために
は何よりも被曝線量を下げる努力、つまり除染の必要があ
り、一方で事故が終息していないのだが、長期化している
ことを考慮すると、例え二度手間であろうとも被曝線量を
下げる努力を継続していかなければならないだろう。

 楽観も悲観もできないなか、地産地消では福島の人々の
リスクが増加することになり、高い防護基準を前提にする
と一般人にとっては1mSv以下が望ましいと示されている
のだが、緊急事態は現在なお継続中であるといったことを
鑑みると、あらゆる方策でもって被曝線量を下げる努力が
何よりも必要とされているのだろう。この続きは機会があ
ればそのときに記すことにする。

 乱筆失礼、明日もがんばろう。

 では。

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2016・11・15 改訂
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この記事について

このページは、Suzuki TakashiがMay 2, 2011 3:26 PMに書いた記事です。

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