検査に協力した被験者のオーダー、生活環境に存在しているリスクのオーダー、そして疫学的に認められる低線量放射線のリスクの関係について

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本稿の前半では、厚労省が発表している人口動態統計の1994年から2010年までの癌による死亡率の確定数から、2011年と2012年の参考値を推定し、2011年の推定値とすでに発表されている2011年の確定数を比較している。そして、その比較をベースにして、今年の9月頃に公表される2012年の確定数を2012年の推定値と置き換えている。後半では、2012年の推定値を用いて、被曝線量が100mSv以下であるケースが確率的影響に区分されていた論拠や、メディアに登場する大学教員やメディアの当事者たちによる「100mSv以下のリスクは誤差に含まれるほど小さいため、安全とみなされる」との結論に含まれる意図的な誤りに対して、経済的要因や社会的要因とは別に、検査に協力した被験者のオーダーや生活環境に存在しているリスクのオーダーの観点から検討を加えている。本来ならば2年前にこの記事を書き上げていたほうが好ましかったとの視点が存在している中で、今後も継続するであろう官邸や各省庁に代表される政府とメディアのプロパガンダにおける意図的な誤りを見抜くことに寄与することを願っている。

癌による死亡率の短期的な推移を線形モデルでなくロジスティック曲線で近似したのは、ある一定の値に近づくであろうといった性質を織り込みたいとの考えからであり、(1)式はそれを常微分方程式の形で表しており、Kが定常状態を示している。そして(2)式は(1)式の解析解になり、そのパラメータであるK, r, λをガウス・ニュートン法によって推定している。

eq1-2013-05

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表1より2010年の段階では、男性、女性、全体におけるリスクが、0.4131、0.3096、0.3170に近づくであろうことが示されている。表1のパラメータを(2)式に代入し、2011年と2012年の参考値を外挿により推定したところ、2011年の男性、女性、全体における推定値は0.3460、0.2211、0.2800になり、2012年の推定値はそれぞれ0.3499、0.2244、0.2828になり、2011年の推定値と2011年の確定数との差は-0.0009、-0.0016、-0.0032であった。一見すると、Kを過小推定していることによってリスクを過小評価している可能性、つまり、2010年以前の短期的な推移と比較して、2011年の確定数が過剰に上回っていることを、2011年の推定値と2011年の確定数との差が示しているとの視点が存在していた。しかし表1のパラメータを推定したときの残差の標準偏差が男性、女性、全体に対して0.003963、0.001842、0.004805であり、n→∞のときに残差の分布が正規分布に法則収束するならば、その95%信頼区間がそれぞれ0.002873から0.006384、0.001335から0.002968、0.003483から0.007741であるため、ここで問題にされている2011年の推定値と2011年の確定数との差は誤差の範囲内にあるとの解釈に落ち着いていた。

table1-2013-05

2012年の推定値であるp2をコントロール群の標本比率にし、P2をその母比率にする。そして低線量放射線のリスクをp2に加えたp1をケース群の標本比率にし、P1をその母比率にする。n→∞のときに二項分布は正規分布に法則収束するので、標本比率の差を表す標本統計量が(6)式で、またその差を標準化した標本統計量が(3)式で示される。帰無仮説をH0、対立仮説をH1とし、H0が真であり、検査に協力した被験者のオーダーが(7)式のようにコントロール群側で調整されるとの仮定を簡便化のために加えると、有意水準を5%としたときに、片側対立仮説である(5)式に対して帰無仮説である(4)式が棄却されるときの棄却域が(8)式で示される。

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表2より「被曝線量が100mSv以下であるケースが確率的影響に区分される」理由の1つとして、コントロール群のリスクが2.244×10-1から3.499×10-1以上のオーダーであり、ケース群について検査に協力した被験者のオーダーが30,950名から40,450名以下のオーダーであり、ICRP Pub.103のA164が前提にしているようにDDREFが2であるならば、疫学的に認められる低線量放射線のリスクは5.5×10-3以上のオーダーにとどまらざるを得ないであろうといったことが挙げられる。そのため「100mSv以下のリスクは誤差に含まれるほど小さいため、安全とみなされる」との結論は誤りであり、100mSv以下のリスクが誤差に含まれるほど小さかったのは、事故や特定の状況に依拠している検査に協力した被験者のオーダーや、生活環境に存在しているリスクのオーダーに依存していたからであるとの見方に落ち着いており、検査に協力した被験者のオーダーが大きく、生活環境に存在しているリスクのオーダーが小さければ、低線量放射線のリスクを疫学的に認めることになるだろうとの立場に立っている。

table2-2013-05

そして10mSvといった被曝線量のリスクが5.5×10-4のオーダーであることを疫学的に認めるためには、DDREFが2であり、コントロール群のリスクが2.244×10-1から3.499×10-1のオーダーであるならば、ケース群について検査に協力した被験者のオーダーが3,095,000名から4,045,000名以上のオーダーであることが求められており、そのオーダーは、比較の対象として、およそ東北地方南部から北関東の一部を含む規模であることを想起させていた。また5mSvといった被曝線量のリスクが2.75×10-4のオーダーであることを疫学的に認めるためには、DDREFが2であり、コントロール群のリスクが2.228×10-1のオーダーであるならば、ケース群について検査に協力した被験者のオーダーが14,427,000名以上のオーダーであることが求められており、そのオーダーは、比較の対象として、およそ東北地方南部から北関東に加えて千葉や東京の一部を含む規模であることを想起させていた。

表3は、DDREFが1であるときに疫学的に求められる、ケース群について検査に協力した被験者のオーダーを、性別や低線量放射線のリスクによって分類して示している。

table3-2013-05

また(8)式より、ICRP Pub.103のA164が参照しているように、DDREFが2であり、コントロール群のリスクが2.828×10-1であり、ケース群について検査に協力した被験者のオーダーが約200万人であるならば、疫学的におよそ14mSv以上のオーダーの被曝線量のリスクが示されることになり、そのオーダーが約800万人であるならば、およそ7mSv以上のオーダーの被曝線量のリスクが示されることになるであろうことを追記する。

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